弁護士×ウェブ解析士 ― デジタルマーケティングを支える予防法務 ウェブ解析士 小松 光さん

「仕事とデジタルマーケティングと資格」をテーマに、ウェブ解析士協会会員の働き方を深掘りするインタビュー。今回は、弁護士でありながらウェブ解析士を取得した、小松 光(こまつ ひかる)さんです。
独立開業を機に受けたウェブサイト制作・SEOの業者からの提案。「提案が妥当かどうか自分で判断できない」との危機感から学習を始めた小松さんが、現在注力されているのは弁護士の「予防法務」。広告やウェブサイトに関する法的リスクを施策の前段階で整理し、マーケティングの目的をできるだけ損なわない形で事業を支える。そんなデジタルマーケティングと予防法務の接点についてお話しいただきました。
(インタビュー:チーフSNSマネージャー 毛利 美佳、編集:上級SNSマネージャー 斎藤 美佳子)
業者提案を「自分で判断できなかった」ところから
――まずは、小松さんの業務内容を教えてください。
小松さん:法律事務所で代表弁護士として、企業や個人事業主からの契約書チェック、日々の法律相談を中心に、個人のお客さまからの交通事故・相続・刑事事件など幅広くお引き受けしています。建物の賃貸管理会社やオーナーからのご相談が多いですね。
――ウェブ解析士を知ったきっかけを教えてください。
小松さん:2025年3月に独立して事務所を立ち上げた時、ウェブサイト制作やマーケティング支援の提案を業者さんから数多く受けたんです。当時の私は「SEO」も「コンバージョン」もまったく知らず、お話を聞いても内容を十分に理解できない状態でした。提案の妥当性や、費用に見合った効果が得られるのかを自分で判断できるようになるために、まずは前提となる知識を身につける必要があると感じました。
――数ある学び方の中で、ウェブ解析士を選ばれた理由は?
小松さん:本屋でマーケティングの本を立ち読みしたんですが、文章だけだと正直何を言っているのか理解できなくて(笑)。用語や概念だけを覚えるのではなく、実際に手を動かしながら学べる方法が自分には合っていると感じました。ウェブ解析士の学習では、問題集を解きながら、自分でもウェブサイトにGoogle アナリティクスを導入して実際に操作するなど、手を動かして学べる点に魅力を感じました。資格として形に残ることもモチベーションになると思いました。
「予防法務」とウェブ解析士は、相性がいい
――現在、注力されているのはどんな仕事ですか?
小松さん:法的なトラブルを未然に防ぐ「予防法務」に力を入れています。トラブルが起きてから解決するのも弁護士の仕事ですが、起きる前に防ぐのも大切な役割です。お客さまが新しい事業やサービスを始める時、スキームを構築する段階で、その事業やサービスに何か法的な問題がないか、どのようなリスクが潜んでいるかを弁護士の視点からアドバイスさせていただいています。
――そこにウェブ解析士の知識がどう生きるのでしょう。
小松さん:特にウェブサイトや広告などのマーケティング施策では、表現や契約面で法的な判断が必要になる場面も多いんです。ウェブ解析士の学習を通じて、施策の目的や意図を以前より理解できるようになったことで、法律上の問題だけを見るのではなく、マーケティングの観点も踏まえてリスクを整理できるようになりました。そうした形で、施策の目的をできるだけ損なわずに、クライアントが安心して施策を進められるようサポートしていきたいと考えています。
――クライアントへの関わり方に変化はありましたか。
小松さん:まだ具体的にデジタルマーケティングに関するやり取りが増えているわけではないんですが、広告表現やサービス内容について相談を受けた際に、法的な観点だけでなく、「なぜこの施策を行いたいのか」というマーケティング上の意図も意識するようになりました。売上向上を目指す施策の意図と法的リスクの両方を踏まえて判断を整理できる点は、クライアントの安心感にもつながるのではないかと思います。
「弁護士の自分が行っていいのかな」——合格祝賀会で広がった世界
――合格祝賀会にも参加されたそうですね。
小松さん:実は行く前まで、すごく不安だったんです。「皆さんウェブデザイナーやデジタルマーケティングを本業にされている方が多いだろうし、弁護士の自分が行っていいのかな」って。でも実際に行ってみたら、皆さん本当にフランクに接してくださって。その場でお会いした方から後日、「事業展開に関して法的な観点でアドバイスが欲しい」とご相談をいただきました。
――「ウェブ解析士の資格を持つ弁護士」という組み合わせが、新しい接点を生んだんですね。
小松さん:そうですね。協会の方からも「セミナーで講演してみませんか」とお声がけをいただいたりして、自分が想像していた以上に視野が広がりました。
――ウェブ解析士の方々と話してみて、感じたことは?
小松さん:クライアント支援で広告やランディングページの改善など、成果に直結する重要な役割を担っていらっしゃる一方で、広告表現や契約面で判断に迷うことがあると伺いました。そうした場面で、法務の観点からリスクを整理し、ウェブ解析士の方々が安心して施策を進められるようサポートできればと思っています。
弁護士の素地と、意外なほど重なっていた
――学習中、弁護士の知識が活きた場面はありましたか。
小松さん:景品表示法や不正アクセス禁止法など、テキスト内の法律に関する項目は、まさに本業の部分ですからスムーズに理解できました。でも法律の知識が直接活きたというよりも、印象的だったのはレポーティングの章です。クライアントへの報告書の作り方や伝え方は、弁護士として裁判所や相手方に主張を分かりやすく伝えるために普段から心がけていることと、まさに重なっていたんです。
――実務未経験で受験することへの不安はありませんでしたか。
小松さん:問題集に「あなたは○○の担当者です」と登場人物の設定が記載されていて、その担当者になりきって解くようにしました。実務経験がない自分にとって、こうした問題設定はとてもありがたかったです。また、実際に数字を使った計算問題が多く出題されていて、単なる公式の暗記ではなく、手を動かして数字を算出するプロセスをなぞれたのも良かったです。
1カ月合格を支えた「問題3分類」勉強法
――弁護士業務の合間に、どう学習時間を確保されましたか。
小松さん:日中は弁護士業務に忙殺されてしまうので、隙間時間をとにかく活用しました。テキストはPDF、問題集はKindleで購入して、混んでいる電車の中でもスマートフォン一つで見られるようにしていました。あと、私は自宅で長風呂をするんですけれども、湯船に浸かりながらテキストや問題集を解いたりもしていました(笑)。
――短期間で合格するために工夫したことは?
小松さん:問題を3つのグループに分けたんです。1つ目は「迷いなく解けた問題」、2つ目は「迷いながらも解けた問題」、3つ目は「間違えた問題」。そして、迷った問題と間違えた問題を重点的に繰り返すことで、効率よく勉強できるよう意識していました。10月末まで別の資格試験があったので、ウェブ解析士の勉強を始めたのは11月。12月中に合格しないと年度が変わってテキストが買い直しになるので、それがちょうどよい締め切りにもなりました(笑)。
ウェブ解析士の方々を、法務の力で支えたい
――今後のビジョンを教えてください。
小松さん:まずは上級ウェブ解析士の取得に向けた学習を通じて、実務への理解をさらに深めながら、ウェブ解析士の方々とももっと関わっていきたいと考えています。機会があれば、ウェブ解析士にとって重要な法改正や、広告規制上注意すべきポイントについて、実務に役立つ形で情報発信もしていきたいですね。
――ウェブ解析士の資格を取って良かったですか?
小松さん:本当に良かったと思います。今の弁護士の仕事において、ウェブマーケティングをどう活用するかを考えるきっかけになりましたし、デジタルマーケティングを何も知らない状況から、体系的に学習できた点で視野がかなり広がりました。マーケティングの視点を踏まえて物事を整理できるようになったことで、法的なリスクだけを見るのではなく、クライアントが何を実現したいのかを理解した上で判断する意識が強くなりました。その意味で、提案や判断の幅が広がったと感じています。
――最後に、これから資格取得を考えている方へメッセージをお願いします。
小松さん:ウェブ解析士で学べる知識は、単なる施策の実行にとどまらず、その施策が必要とされる事業や課題そのものを理解するための土台になります。実務に直結する知識を体系的に学べる点で、これからウェブに関わる方や、より理解を深めたい方にとって、有意義な資格だと思います。
あとがき
「畑違いではないか」と不安を抱えながらも、ウェブ業界のコミュニティへ一歩踏み出した小松さん。弁護士という専門職にウェブ解析士の知識を掛け合わせ、「予防法務」の実践に活かしていく姿勢が印象的でした。
「ウェブ解析士の方々が安心して施策を進められるようサポートできれば」と語る小松さんの言葉からは、異なる専門性をつないで仲間を支えようとする姿勢が伝わります。士業や専門職の方がウェブ解析士に挑戦する際の、心強いロールモデルになるはずです。小松さんの今後のご活躍に注目しています!
関連リンク
エスピリト法律事務所: https://www.espirito-law.net/
