
皆さんこんにちは。ウェブ解析士マスター 山田恵理子です。
この記事では、ウェブ解析士協会(WACA)のサイトを、ウェブ解析士自身が分析・改善していくプロセスをお見せしていきます。
前回の記事では、検索データから「過去問を解いてみたい」というニーズを見つけ、模擬問題ページを作った話をしました。模擬問題を見た人は、試験一覧ページまで進む確率が2倍以上になるという結果が出た施策です。

今回はその続きです。
模擬問題がうまくいったことで、私たちはこう考えました。
「検討中の人が知りたいことは、まだほかにもあるのではないか?」
模擬問題の次に見えた、2つの「ユーザーが知りたいこと」

模擬問題ページは「自分にも解けそうかな?」という疑問への答えでした。
しかし、資格を検討している人の頭の中には、ほかにも疑問があるはずです。
- 「そもそも、どんなことを学ぶの?」 講座名や目次だけでは、学びの中身は想像しにくい
- 「取得したら、何が変わるの?」 費用と時間をかける以上、その先を知りたいのが本音
1つめの疑問に対して、当時のサイトには公式テキストの紹介ページはありましたが、中身を見られる場所はありませんでした。「買えばわかります」では、検討中の人には遠すぎます。
2つめの疑問に対しては、合格者の声はあっても、「取得後の変化」を具体的な数字で示すものはありませんでした。

そこで、2つのコンテンツを追加することにしました。
やったこと①:テキストのサンプルPDFを公開した

公式テキストのサンプルPDFを公開し、「ウェブ解析士とは」ページと「公式テキスト」ページの2か所からダウンロードできるようにしました。
狙いはシンプルです。どんなことを学ぶのか、実物で具体的に知ってもらい、興味を持ってもらうこと。
模擬問題が「問題を解く体験」なら、サンプルPDFは「学ぶ内容の試し読み」。どちらも「申し込む前に、中身に触れられる場所」という点で共通しています。
やったこと②:取得者アンケートを年収まで赤裸々に公開した

もう1つが、資格取得者へのアンケート結果を公開するページです。
「取得してどう変わったか」を、年収の変化まで含めて赤裸々に掲載しました。

資格取得を迷っている人にとって、いちばん知りたいのは「取ったら本当に良くなるのか」。そこにきれいな宣伝文句ではなく、実際の取得者の数字で答えよう、という試みです。
結果①:3つのコンテンツはどれくらい見られた?
まず「そもそも見られているのか?」を確認します。公式テキストサンプルPDF公開日の6月10日から7月16日までの37日間のデータです。
サンプルPDFのダウンロードリンクは、合計329回クリックされていました(1日あたり約9回)。クリックした人は、計測できた範囲で約130人です。
設置した2ページの内訳は次の通りです。
| 設置ページ | クリック数 |
|---|---|
| ウェブ解析士とは(/course/wac/) | 201回 |
| 公式テキスト紹介(/course/wac/textbook/) | 128回 |
次に、いちばんアクセスの多い「ウェブ解析士とは」ページの上で、3つのコンテンツへのリンクがどれくらい押されているかを見てみます。

図:「ウェブ解析士とは」ページを訪れた人のうち、各コンテンツのリンクを押した人の割合。模擬問題とPDFは1割前後の人が押しているが、アンケートは約1%にとどまる
| リンク | クリック/遷移数 | 訪問ユーザーのうち押した人の割合 |
|---|---|---|
| 模擬問題 | 248回 | 9.9% |
| テキストPDF | 201回 | 7.2% |
| 取得者アンケート | 27回 | 1.1% |
※2026年6月10日〜7月16日、「ウェブ解析士とは」ページ(訪問974ユーザー)上のリンクが対象。模擬問題・アンケートはページ遷移数、PDFはダウンロードクリック数で計測しています
模擬問題は約10人に1人、PDFは約14人に1人が押しており、どちらも主要な導線として使われていることがわかります。特にPDFは公開から1か月あまりで、模擬問題に近い水準まで来ています。
一方、取得者アンケートは約1%。この差が何を意味するのかは、後半で改めて触れます。
結果②:PDFをダウンロードした人は、試験一覧を見る確率が1.9倍に
ここからが本題です。前回と同じ問いを立てました。
「PDFをダウンロードした人」と「しなかった人」で、その後の行動はどう違うのか?
対象は、「ウェブ解析士とは」ページに来てくれた人たち。試験一覧ページ(試験のスケジュール・申し込みページ)まで進んだかどうかを比較しました。
| PDFをDLした人 | DLしなかった人 | |
|---|---|---|
| 人数 | 108人 | 925人 |
| 試験一覧の閲覧率 | 61.1% | 32.5% |
| 倍率 | 1.9倍 | — |
※2026年6月10日〜7月16日。「ウェブ解析士とは」ページの訪問者のうち、行動を計測できたユーザーを対象とした比較
PDFをダウンロードした人の61.1%が試験一覧まで進んでいました。ダウンロードしなかった人(32.5%)の1.9倍です。
「どんなことを学ぶのか」を実物で確かめた人は、次のステップである「いつ・どうやって受けられるのか」へ自然に進んでいるという行動がデータに表れています。

ちなみに、同じ期間・同じ方法で模擬問題を見た人を集計すると、試験一覧の閲覧率は66.4%(見なかった人の2.1倍)。前回の記事で報告した傾向が、時期を変えても再現していました。
「申し込む前に中身に触れられる場所」は、種類を変えても有効。
これが2つの施策を比較してみてわかったことです。
3つのコンテンツをまとめると、次のようになります。

図:「ウェブ解析士とは」ページを訪れた人のうち、各コンテンツに触れた人は、触れなかった人に比べて約2倍の割合で試験一覧ページ(試験日程・申込)まで進んでいた
| コンテンツ | 見た/DLした人 | 見ていない人 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| テキストPDF | 61.1%(108人中66人) | 32.5%(925人中301人) | 1.9倍 |
| 模擬問題 | 66.4%(113人中75人) | 31.7%(920人中292人) | 2.1倍 |
| アンケート ※参考値 | 76.9%(13人中10人) | 35.0%(1,020人中357人) | (2.2倍) |
※2026年6月10日〜7月16日。「ウェブ解析士とは」ページの訪問者のうち行動を計測できた1,033人が対象。アンケートは見た人が13人と少ないため参考値です(詳しくは次の章で)
アンケートページは「これから」の段階
一方、正直に書くと、取得者アンケートのページはまだ結果を判断できる段階にありません。
この期間にアンケートページまで進んだ人は、計測できた範囲で13人。この13人の試験一覧閲覧率は76.9%と高い数字でしたが、母数が小さすぎて、偶然の範囲を超えているとは言えません。
数字が小さい理由の1つは、導線です。現在アンケートページへのリンクは「ウェブ解析士とは」ページにしかなく、リンクを押す人はページ訪問者の約1%にとどまっています。模擬問題(約10%)やPDF(約7%)と比べると、そもそも気づかれていない可能性があります。
「コンテンツが響いていない」のか「導線が弱いだけ」なのか。まずはリンクの見せ方を改善して、データが貯まってから改めて評価することが、次の宿題です。
うまくいったことだけでなく、まだ判断できないことを「判断できない」と言う。
これもウェブ解析士の大事な仕事です。
この数字は「因果」を証明していない
前回の記事でも触れましたが、今回も同じ注意書きをしておきます。
「PDFをダウンロードした人の閲覧率が1.9倍」という結果は、「PDFのおかげで1.9倍になった」ことの証明ではありません。もともと真剣に検討している人ほどPDFをダウンロードしやすい、という逆方向の説明も可能だからです。
それでも、この数字には意味があります。
- 「中身に触れた人が次に進みやすい」という傾向が、模擬問題・PDFという別々の施策で繰り返し確認されたこと
- PDFのダウンロードが、「真剣に検討している人」を見つける目印として機能すること
因果の証明には、リンクの有無を出し分けるABテストなどが必要です。ですが、その手前の「仮説を立て、作り、数字で確かめ、次の打ち手を決める」というサイクルは、今回も十分に回すことができました。
この記事のポイント
今回やったことを、3つに整理します。
- 検討中の人の「まだ答えていない質問」を探した
「何を学ぶの?」「取ったらどうなるの?」模擬問題の成功から、次の疑問を洗い出した - 実物と実データで答えるコンテンツを用意
テキストのサンプルPDFと、年収まで公開する取得者アンケート - 効果を数字で確認し、次の打ち手を決めた
PDFのDL者は試験一覧の閲覧率が1.9倍。アンケートは導線改善が先、と判断
派手な施策ではありません。でも、「ユーザーの疑問に、サイトがちゃんと答えているか?」を問い直し、答えを用意し、効果を数字で確かめる。この繰り返しが、サイトを少しずつ「役に立つ状態」に変えていきます。
データを見る目が変わると、サイトが伝えてくれる「ユーザーの声」が、はっきり聞こえるようになります。
