
こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。
BtoB企業のウェブサイトを見ると、多くのサイトで「無料相談はこちら」「お問い合わせはこちら」といったCTA(Call To Action)が目立つ位置に設置されています。トップページのファーストビュー、記事下、サイドバー、資料ページなど、あらゆる場所で問い合わせを促している企業も少なくありません。
しかし実際には、「アクセス数はあるのに問い合わせが増えない」「広告費をかけても商談につながらない」「コンテンツは読まれているのにCVしない」と悩んでいるマーケティング担当者や経営者は非常に多いのではないでしょうか。
このとき、多くの企業は「CTAボタンの色が悪いのでは」「文言を変えるべきでは」「フォームが長すぎるのでは」といった、テクニックの改善を考えます。もちろんそれらも重要です。しかし、本質的な問題はもっと別の場所にあるケースが少なくありません。
それは、「ユーザーがまだ相談したい状態ではない」という点です。
特にBtoB領域では、商品やサービスの検討期間が長く、複数人で意思決定されることが一般的です。ユーザーはサイトに訪れた瞬間から問い合わせをしたいわけではなく、まずは「情報収集」をしたいと考えています。
「自社に合うサービスなのか」「他社はどう活用しているのか」「費用感はどれくらいなのか」「比較対象には何があるのか」こうした疑問や不安を解消しながら、少しずつ検討を深めていくのです。
つまり、BtoBサイトにおいて重要なのは、「いますぐ客」だけを狙うことではありません。検討初期〜中期のユーザーに対しても適切な情報提供を行い、段階的に信頼を醸成していくことが重要なのです。
本記事では、なぜ「無料相談はこちら」が機能しないのかをテーマに、BtoBユーザーの心理や検討フェーズを整理しながら、成果につながるCTA設計の考え方を解説していきます。
情報収集段階のユーザー心理を理解する
BtoBサイトに訪れるユーザーの多くは、「いますぐ相談したい」と考えているわけではありません。むしろ、多くのユーザーは、まだ検討途中の段階にいます。ここを理解せずに、すべての訪問者へ「無料相談はこちら」を提示してしまうと、ユーザーとの温度差が生まれ、結果としてCTAが機能しなくなってしまいます。
BtoB商材は、個人向けサービスとは異なり、意思決定までに時間がかかるケースが一般的です。例えば、数十万〜数百万円規模のシステム導入や業務委託であれば、担当者一人で即決できることはほとんどありません。社内で比較検討を行い、上司への説明や稟議、場合によっては複数部署との調整も必要になります。
そのため、サイト訪問時のユーザー心理は、「まずは情報を集めたい」が中心です。
「どんなサービスなのか」
「自社と似た企業は導入しているのか」
「費用感はどれくらいなのか」
「競合と何が違うのか」
こうした情報を集めながら、相談する価値がある会社かを見極めようとしているのです。
さらに、ユーザーには「営業されたくない」という心理も存在します。問い合わせをした瞬間に営業電話が来る、強引に商談化される、頻繁に連絡が来る、こうした経験を持つ担当者は少なくありません。だからこそ、「相談」という行為そのものに心理的ハードルが生まれています。
特に、「問い合わせ=導入前提の行動」に感じられてしまうのではないかという恐怖が存在します。本当は少し資料を見たいだけなのに、相談をすると商談フェーズに引き込まれるのではないか、と警戒してしまうのです。
つまり、BtoBサイトにおけるCTA設計では、「ユーザーはまだ相談したくないかもしれない」という前提を持つことが重要です。いきなり問い合わせを迫るのではなく、まずは資料ダウンロードや事例閲覧、比較情報の提供など、ユーザーが安心して次の一歩を踏み出せる導線を用意する必要があります。
BtoBマーケティングにおいて成果を出すためには、「今すぐ客」だけを見るのではなく、検討途中のユーザー心理を理解した設計が欠かせないのです。
CTAが「売り手目線」になっていないか?
「無料相談はこちら」というCTAを設置しているにもかかわらず、問い合わせが増えないサイトには、いくつかの共通点があります。その多くは、ユーザー視点ではなく、「売り手目線」で導線が設計されていることです。
企業側としては、当然できるだけ早く問い合わせを獲得したいと考えます。特に広告費をかけて集客している場合、「とにかくCVを増やしたい」という意識が強くなり、サイト内のあらゆる場所で問い合わせCTAを押し出してしまいがちです。
しかし、前述の通り、BtoBユーザーの多くはまだ情報収集段階にいます。その状態で「無料相談はこちら」を繰り返し提示されても、ユーザーからすると「まだそこまでではない」という感覚になってしまいます。結果として、CTAがスルーされるだけでなく、「この会社は営業色が強そうだな」というマイナス印象につながることさえあります。
特に多いのが、「すべてのページに同じCTAしかない」ケースです。
例えば、ノウハウ記事を読んでいるユーザーは、まず知識を得たい状態かもしれません。それにもかかわらず、記事下にいきなり「無料相談はこちら」しか存在しなければ、ユーザーの行動意欲とCTAが噛み合わなくなります。本来であれば、「関連資料をダウンロードする」「導入事例を見る」「他社比較コンテンツを読む」といったような、次の情報収集導線が必要です。
また、「サービス内容の説明不足」もよくあるケースです。
費用感も導入イメージも分からないまま、「まずは相談してください」と言われても、ユーザーは不安を感じます。特にBtoBでは、導入後の運用負荷や社内調整などの面も考慮して検討されるため、情報不足の状態では問い合わせまで進みにくいのです。
BtoBサイトに必要なのは「段階別CTA設計」
BtoBサイトで成果を出すためには、「無料相談はこちら」だけに依存するのではなく、ユーザーの検討フェーズに合わせた「段階別CTA設計」が重要になります。
なぜなら、サイト訪問者の温度感は一律ではないからです。まだ課題を整理している段階のユーザーもいれば、競合比較をしているユーザー、社内稟議に向けて情報を集めているユーザー、すでに導入を前向きに検討しているユーザーもいます。
にもかかわらず、前述の通り、全員に対して同じ「無料相談CTA」しか提示していないサイトは少なくありません。これでは、多様な検討フェーズに対応できません。
例えば、検討初期のユーザーには、「ノウハウ資料ダウンロード」や「課題整理ガイド」といった情報提供型CTAが有効です。この段階のユーザーは、まだサービス選定よりも、「そもそも何が課題なのか」「どのような解決策があるのか」を知りたい状態だからです。
一方で、比較検討フェーズに入っているユーザーには、「導入事例」や「比較資料」が有効になります。
「自社と近い業界で成果が出ているのか」
「他社サービスとの違いは何か」
「導入後にどのような効果があったのか」
こうした情報が、意思決定を後押しします。特にBtoBでは、“他社実績”が信頼形成に大きく影響するため、事例コンテンツは非常に重要です。
さらに、導入意欲が高まっているユーザーに対しては、「無料相談」「デモ依頼」「見積依頼」など、より商談に近いCTAが機能しやすくなります。
ユーザーの検討プロセス全体を理解し、それぞれの段階に合ったCTAを配置することこそが、成果につながる導線設計なのです。
「問い合わせ」だけをKPIにすると導線は崩壊する
BtoBサイトの成果指標として、「問い合わせ件数」をKPIに設定している企業は少なくありません。もちろん、問い合わせは商談や受注につながる重要な指標です。しかし、問い合わせだけを追いかけ始めると、サイト全体の導線設計が崩れてしまいます。
「とにかく問い合わせへ誘導するサイト」はその典型例です。
記事を読んでも、サービスページを見ても、表示されるのは「無料相談はこちら」ばかり。資料ダウンロードや事例閲覧などの中間導線はほとんど存在せず、ユーザーに対して「今すぐ問い合わせるか、離脱するか」の二択を迫ってしまっています。
しかし、何度も繰り返しお伝えしている通り、実際のユーザーは、そんなに短期間で意思決定をしません。検討期間が数週間〜数か月に及ぶことも珍しくありません。
その間、ユーザーは何度も情報収集を繰り返し、競合比較を行い、社内調整を進めています。つまり、問い合わせ以前にも、多くの検討行動が存在しているのです。
にもかかわらず、「問い合わせ件数」しか見ていないと、それ以外の接点が軽視されてしまいます。
例えば、
・資料ダウンロード
・導入事例の閲覧
・セミナー申込
・メルマガ登録
・比較コンテンツの閲覧
などは、ユーザーの検討を前進させる重要な行動です。しかし、これらを「成果ではない」と扱ってしまうと、サイトは次第に「今すぐ問い合わせを取ることだけ」に最適化され、結果的に多くの見込み顧客を取りこぼしてしまいます。
BtoBマーケティングでは、「育成=ナーチャリング」という視点が欠かせません。
例えば、資料DLをしたユーザーに対してメールで関連情報を届けたり、事例コンテンツへ誘導したりすることで、少しずつ検討度を高めていくことができます。こうした育成を経て、最終的に問い合わせへつながるという考え方が大切です。
まだ相談したくないユーザーとも接点を持ち、信頼関係を構築しながら、時間をかけて商談化へ導いていくことが重要です。問い合わせ数だけをKPIにするのではなく、「ユーザーの検討をどれだけ前に進められたか」という視点で目標数値を設計することが求められます。
さいごに
BtoBサイトで成果を出そうとすると、多くの企業が「問い合わせ数を増やしたい」と考えます。そして、その結果として「無料相談はこちら」というCTAを強く押し出すサイト構成になりがちです。しかし、本記事で見てきたように、BtoBユーザーの多くは、サイト訪問時点ではまだ相談したい状態ではありません。
ユーザーはまず、情報収集を行います。
「自社に合うのか」
「他社はどう導入しているのか」
「費用感はどうか」
「比較すると何が違うのか」
こうした疑問を少しずつ解消しながら、検討を前に進めています。つまり、BtoBサイトに求められるのは、「いきなり商談化すること」ではなく、「検討を支援すること」なのです。
そのためには、まずは「無料相談」だけに依存したCTA設計から脱却する必要があります。
資料ダウンロード、導入事例、比較コンテンツ、セミナー、メルマガ登録など、ユーザーの検討フェーズに合わせた複数の接点を設計することで、まだ温度感の低いユーザーとも継続的な関係を築くことができます。
BtoBマーケティングでは、「今すぐ客」だけを狙う発想には限界があります。問い合わせをするタイミングではなくても、将来的に顧客になる可能性を持ったユーザーは数多く存在しています。そうしたユーザーに対して適切な情報提供を行い、信頼を積み重ねていくことこそが、中長期的な商談創出につながります。
特に近年は、ユーザー自身がインターネット上で多くの情報を収集し、比較検討を進める時代です。営業担当者と接触する前に、ある程度の意思決定が進んでいるケースも少なくありません。だからこそ、ウェブサイト自体が「営業の代わり」として機能する必要があります。 本当に重要なのは、ボタンの色や文言ではなく、ユーザー心理に寄り添った導線設計だと言えます。皆さまの会社においても、これらの視点でサイト導線を見直してみてください!きっと更なる成果につながるはずです!

