地域おこしにSNSスキルは役に立つのか 初級SNSマネージャー 助川富美恵さん

SNSやウェブで伝える力があれば、地域の魅力がもっと伝わるはず。リアルなお話を、地域おこしの現場で実践する方に聞いてみました。
「仕事とデジタルマーケティングと資格」をテーマに、ウェブ解析士協会会員の働き方を深掘りするインタビュー。今回は、石川県能登町の地域おこし協力隊、助川富美恵さんにお話を伺いました。助川さんが、東京のウェブマーケティング会社で経験を積み、2026年、能登町地域おこし協力隊へ着任した背景と、地域おこしにおけるSNS・ウェブ運用とは。
(インタビュー、編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
町民の前で号泣したビジネスプラン発表会から、能登に移住するまで
――石川県能登町の地域おこし協力隊に志願したきっかけは?
助川さん: 私が能登と関わりはじめた原点は、2022年11月に参加した「能登ローカルシフトアカデミー」というビジネススクールでの最終発表です。
能登町でやりたいことを4カ月間で形にするプログラムだったのですが、最終日に町民のみなさんの前でプレゼンをした直後、自分の力不足とやりきれなかった悔しさから大号泣してしまって。でも、その悔しさこそが「もっと能登に関わりたい」という強い原動力になりました。

――発表直後から、どのように能登との関わりが深まっていったのでしょうか。
助川さん: 後日、能登町役場の方が前職のメンバーズを訪問してくださり、そこで初めて出会ったのが、当時は能登町役場の課長であり、のちに私が所属する一般社団法人HERO’s Labo代表の小川勝則さんでした。
さらに1週間の体験イベント「のとweek」に参加したことで、能登に住みたい思いが芽生え始めました。
能登の里山里海の美しさや、食の美味しさはもちろんですが、何より現地の人たちが本当に優しくて。「ウチに泊まっていきなよ!」と声をかけてくれる仲間が増えるたびに、どんどん「能登沼」にハマっていきました(笑)。

――2024年1月に能登半島地震が起きました。当時の状況は?
助川さん: 発災当時、私は能登におらず、報道とSNSで被害状況を知ることしかできませんでした。
特別な力や技術があるわけでもなく、現地で自己完結できるわけでもない自分が悔しくて……。悲しい報道にメンタルも落ち込んでいました。
転機となったのは、発災から3カ月後にようやく、珠洲へのボランティアで現地へ行けたことです。能登の人たちの顔を見て「会えた」という安心感を得られたことで胸がいっぱいになり、「やっぱり私は能登を舞台にプレイヤーとして関わっていくんだ」と心に再決意しました。

能登に人生を捧げる覚悟が決まった
――そこから2026年の協力隊就任まで、どのような活動を重ねてきましたか。
助川さん: 月1ペースで東京から能登に通うようになり、現地に根ざした活動へ挑戦しました。
2024年から2025年にかけては、宇出津の「あばれ祭」でキリコを担ぐプロジェクトを発起人の1人として推進したり、株式会社御祓川のメディアクリエイターとして地産品のPRや大学生のビジネスコンテストのコーディネート、関係人口創出イベントに携わったりました。

また「能登ローカルシフトアカデミー」の広告運用やイベントでの登壇など、ウェブマーケティングと現地での泥臭いアテンドの両面で活動を重ねていきました。
御祓川の仕事で七尾市に1週間ほど滞在しながら働くことを繰り返すなかで、能登で暮らす楽しさを実感し、東京と能登の二拠点生活への想いが日に日に強くなっていったんです。
2026年に入り「能登に自分の住処をつくろう」と目標を立てて動き始めていました。

――最終的に地域おこし協力隊に就任した決定打は何だったのですか?
助川さん: 能登が復旧から復興、そしてまちづくりやビジネス創出のフェーズへと移る中で、あばれ祭やツアーコーディネートでの経験を通じて現地での信頼や手応えを感じられるようになっていました。
そんなタイミングで、HERO’s Laboで地域おこし協力隊募集を知り、私の「やりたいこと」と「能登で暮らしたい条件」と募集要項がまさに完璧に合致していて、「今だ!」と確信したんです。今こそ自分が求められている。腹を括って移住し、能登に骨をうずめる思いが固まりました。
自分の人生において、もう能登を離れることはない。能登を拠点に生き、活動していこうと決意し、2026年7月1日に正式に着任しました。

地域で求められるのは、ウェブ・SNSの実行役
――現在は、どのようなお仕事をされていますか?
助川さん:地域団体等配置型能登町地域おこし協力隊として、一般社団法人 HERO’s Laboに所属しています。主な業務は、関係人口の受け入れコーディネート、コミュニティ運営、Instagram運用のほか、能登のイベント企画・広報、広告運用、集客支援など、多岐にわたっています。
私個人では、SNSで能登の魅力を発信する観光PRや、現地ツアーのアテンド、イベント企画や登壇などに取り組んでいます。
――SNSやウェブのスキルは、どんな場面で役に立っていますか?
助川さん:地域に飛び込んでみて思うのですが、ウェブの知識や情報発信スキルを求める地域は多いです。観光PR、商品のブランディング、ウェブサイト制作などさまざまです。
ウェブ・SNSの相談が、組織ではなく個人に集まるのも特徴的です。地域の一員として指名を受け、幅広い領域の支援・実行するために、これまでの知識と経験が役立っていると感じます。

スキルよりも大事なことは、現地で人を知り、関係性を培う時間と行動
――初級SNSマネージャーは、どんなタイミングで取得したのですか。
助川さん:取得したのは3年前で、当時はまだ東京で働いていました。
実務経験はありましたが、あらためて学び直して資格を取れば、自分のスキルを整理して対外的に伝えやすくなると考えたからです。
能登に移住すると決めるまでに、いろいろな地域でフリーランスとしてお仕事をいただく機会がありました。そのときから役立っていると感じます。
――地域課題を解決するために、ウェブスキルを持つ方が今すぐできることは何だと思いますか。
助川さん:まずは現地へ足を運ぶことだと思います。特産品や地理的な条件、気候、人々の気質は、直接会わないとわかりません。
オンラインで完結してしまうと、うまくいきません。会って関係性を築いたうえで提案する。スキルの実践よりも信頼関係がまず先だと感じています。
――これから地域に関わりたい方は、何から始めるとよいでしょうか。
助川さん:地方にはウェブ・SNSで解決できる課題がたくさんあるので、どんどん挙手して関わるのがおすすめです。
ただ、いきなり手法を持ち込むのではなく、まず現地に身を置いて、信頼関係を育てるための時間を惜しまない姿勢を大切にしてほしいです。

地域間交流を増やす架け橋になりたい
――今後、目指しているビジョンを聞かせてください。
助川さん:能登を好きになる人を増やしていきたいです。美味しい魚や豊かな自然など、たくさんの魅力があります。きっと、能登に来れば何かハマるものが誰にでもあると思うんです。
一人ひとりの心に刺さるものを集めて、観光から一歩踏み出し、地元の事業者のサポートやビジネスに関わる人を増やしたいです。そのために、能登に関わる人を増やす架け橋のようなコーディネーターになりたいと思っています。
――最後に、資格取得を考えている方へメッセージをお願いします。
助川さん:しっかり学び、資格を取得したら、自分の言葉で対外的に伝える、活かす姿勢が大切だと思います。
受講を検討している方は、ぜひチャレンジして、「好き×求められている」を見つけて、自分のキャリアを広げていってほしいです。私が地域で実感しているように、このスキルは、ウェブ業界だけではない意外な場所でも活かせます。

あとがき
大学時代にウェブ解析士の資格を知って以降、デジタルマーケティングの世界で活躍してきた助川さん。インタビューのたびに新しいフィールドを切り拓く姿がとてもステキです。
地域おこしへ関わる方も、地域おこしに興味のある方も、まずは一歩、気になる地域へ踏み出してみてはいかがでしょうか。
関連リンク
一般社団法人HERO’s Labo(Instagram):https://www.instagram.com/heros.labo/
能登ローカルシフトアカデミー(Instagram):https://www.instagram.com/local.shift.academy/
※助川さんは、ウェブ解析士、上級ウェブ解析士取得時にもインタビューに答えてくださっています。彼女のこれまでの歩みもご一読ください。


