— JAPAN BOXING CLUB KLCC 海外展開事例
※本記事は、WACAが海外進出サポートのプロフェッショナル企業BRDIGE International Asia Sdn Bhd(ブリッジインターナショナルアジア)との協業において、実際の支援事例をまとめたものです。

日本国内で事業を展開している企業にとって、海外市場への進出は大きなビジネスチャンスである一方、言語・文化・商習慣の違いから集客やブランディングに苦労するケースも少なくありません。
こんにちは、エスファクトリーの井水です。
本記事では、日本国内で複数のボクシングジムを運営するJAPAN BOXING CLUBが、初の海外拠点としてマレーシア・クアラルンプールのKLCCエリアに出店した際、SNS広告運用を軸にどのように集客を成功させたのかをご紹介します。海外展開を検討されている方や、現地でのデジタルマーケティングのイメージを掴みたい方の参考になれば幸いです。
プロジェクト概要
クライアント:JAPAN BOXING CLUB
JAPAN BOXING CLUBは、「フィットネス感覚で誰でも気軽に楽しめるボクシングジム」をコンセプトに、東京(6店舗)、埼玉(1店舗)、大阪(2店舗)と日本国内で計9拠点を運営する企業です。元プロボクサーの代表がトレーナーの質にこだわり、清潔感のある明るい空間づくりを大切にしています。

同社が初の海外拠点としてマレーシアを選んだ背景には、現地のボクシングジム市場への着目がありました。
マレーシアにもボクシングジムは存在するものの、いわゆる「男臭い」「薄暗い」雰囲気のジムが多く、女性が気軽に通えるような洗練された空間はほとんどなかったのです。JAPAN BOXING CLUBの「清潔で明るく、ダイエットやフィットネス目的の女性も歓迎する」というコンセプトは、マレーシアの市場で十分に差別化できるポテンシャルがあると判断されました。
支援パートナー:BRDIGE International Asia Sdn Bhd
BRDIGE International Asia Sdn Bhd(以下、ブリッジ社)は、マレーシアを拠点に日本企業の東南アジア進出をワンストップで支援する総合マーケティング企業です。法人設立、市場調査、デジタルマーケティングなど幅広い領域をカバーしています。
BOXING CLUBの代表がマレーシアでの市場視察を行っていた際、会社設立について問い合わせたことがきっかけとなり、法人設立のサポートは別の事業者が対応する一方で、SNSを活用したマーケティング支援をブリッジ社が担当することになりました。
支援の範囲
| 項目 | 内容 |
| 対象メディア | TikTok、Instagram |
| 支援内容 | SNS広告運用(出稿設定、クリエイティブ方針のアドバイス、効果測定) |
| 広告予算 | 各メディア月額 約1,440リンギット(約5.7万円)×2メディア |
| 動画制作 | 初期は約5〜8本をブリッジ社で制作。 以降はクライアント自身で運用 |
| Webサイト | クライアント側で構築済み。アドバイスを適宜提供 |
戦略と施策:ジムオープン前からの攻めのSNS展開
1. オープン前からの認知獲得
本プロジェクトの特徴的なポイントは、ジムのグランドオープン前からSNS広告を展開したことです。
「KLCCに日本発の洗練されたボクシングジムがオープンする」という期待感を事前に醸成する狙いがありました。
初期の動画コンテンツは日本国内の店舗素材を活用して制作し、マレーシアのユーザーに「日本クオリティのジムがやってくる」というメッセージを訴求。具体的には、清潔で明るい空間の様子、マレーシアでは珍しい日本式ジムであること、KLCC駅からのアクセスの良さといった情報を中心に発信しました。
2. TikTokとInstagramの使い分け
TikTokとInstagramの両方でアカウントを運用し、基本的には同じ動画コンテンツを投稿しました。SNS広告についてはTikTokとInstagramの両方で出稿を計画していましたが、TikTokではボクシングの動画が「暴力的コンテンツ」と判断され広告配信がストップしてしまうという予想外の事態が発生(現在は解消)。結果としてInstagramを中心に広告運用を行う方針に切り替えました。
この経験は、海外でのSNS広告運用では各プラットフォームの審査基準が国や地域によって異なる場合がある、という重要な学びになりました。
なお、TikTokのオーガニック運用自体は好調で、現在フォロワー数は5千を超えて、動画の視聴も順調に増えています。

3. コンバージョン動線の設計
集客の基本的な動線は「SNS投稿・広告 → Webサイト → 体験予約(フォーム)」というシンプルな導線です。競合となるマレーシア国内のボクシングジムもSNSを活用していたため、コンテンツの質と広告配信の最適化で差をつける戦略を取りました。

広告のターゲティングは地域と年齢、さらには興味関心で絞り込み、見学予約や入会につながるコンバージョンを重視。
ジムがどのような場所で、どういったトレーニングが体験できるのかという疑問を解消するような動画クリエイティブを制作し、入会への心理的ハードルを下げることを意識しました。

成果:オープン前から会員獲得に成功
SNS施策の成果は、クライアントからも高く評価されています。主な成果は以下のとおりです。
| 成果指標 | 結果 |
|---|---|
| オープン前の反応 | 広告配信と同時に見学予約・問い合わせが続々と入り、オープン前から予約が確保できた |
| 初期会員数 | 開業直後にいきなり約50名の会員を獲得 |
| 現在の会員数 | 80〜90名規模まで成長 |
| SNSフォロワー | 着実に増加中。TikTok・Instagramともに認知拡大に貢献 |
| 初期広告効率 | 約10万円の投下で約50名の入会につながった |
特筆すべきは、ジムがまだオープンしていない段階から見学予約が入っていたことです。事前のSNS施策によってターゲット層の期待感を十分に高められたことが、スタートダッシュの成功要因と考えられます。
直面した課題と改善アプローチ
順調に会員を獲得してきた一方で、運営が進む中でいくつかの課題も見えてきました。
課題1:動画コンテンツのマンネリ化
クライアント自身が動画を運用するようになってからは、1日に1〜2本のペースで投稿が行われていました。投稿頻度は高いものの、似たような内容の動画が増え、ユーザーの関心が薄れつつあるという懸念が出てきました。
これに対し、「量より質」への転換を提案しました。投稿頻度を落としてでも、1本あたりの企画や演出にこだわった高品質な動画を制作し、その動画に対して広告を出稿するほうが費用対効果が高いのではないかというアドバイスを行いました。
課題2:広告効果のトラッキング
たとえば38,500回再生を記録した動画があった場合、その再生がどれだけ実際の入会につながっているのかを正確に追跡する仕組みが不十分でした。再生数やいいね数といったエンゲージメント指標と、最終的なコンバージョン(入会)を結びつけて計測する体制の構築が課題として挙がっています。
課題3:新規会員・見学者数の伸び悩み
初期の勢いが落ち着いた後、新規の会員獲得や見学申し込みは減少傾向にありました。SNS経由でジムの場所に関する質問が多く寄せられていたことから、Webサイト上でのロケーション情報の見せ方を改善するなど、SNSで拾ったユーザーの声をサイト改善に反映する取り組みも進めています。
また、インタビュー動画の音質改善や、Webサイトに訪れたユーザー視点でより見学につながりやすい改善点も挙げられており、継続的な施策が行われています。
課題4:イベントを活用した集客強化
今後の方向性として、イベント開催による集客も進めています。イベントの告知と連動した広告出稿により、ジムの認知を広げると同時に新規体験者を増やす施策です。イベント経由の来場者を追跡して入会につなげるところまでのトラッキング整備が今後の重点テーマとなっています。

海外展開で得られた学び
本事例を通じて、日本企業の海外SNSマーケティングにおけるいくつかの重要な示唆が得られました。
- 「日本品質」は武器になる:マレーシアの既存のボクシングジムにはない「清潔で洗練された空間」「日本式のトレーニング品質」というポジショニングが、現地で明確な差別化要因となりました。特に女性やフィットネス目的の層には強く響いています。
- オープン前の仕掛けが重要:開業前からSNS広告を展開し、期待感を醸成したことで、オープン直後から会員を確保。海外では認知ゼロからのスタートになるため、事前の種まきが不可欠です。
- プラットフォームの審査基準に注意:TikTokでボクシング動画が暴力的と判断されたように、日本では問題なく配信できるコンテンツが海外プラットフォームではNGとなるケースがあります。複数メディアでの運用でリスクを分散する姿勢が大切です。
- 現地パートナーとの連携が鍵:言語、文化、広告プラットフォームの仕様など、海外特有の事情を熟知したパートナーとの協業により、スピーディーかつ的確な施策実行が可能になります。
- 量より質への転換タイミングを見極める:立ち上げ期は投稿頻度で認知を広げ、一定の認知を獲得した後は品質重視の動画+広告出稿で効率を高める。フェーズに応じた戦略の切り替えが求められます。
まとめと今後の展望
JAPAN BOXING CLUBのマレーシア進出事例は、日本企業が海外市場でSNSを活用した集客に取り組む際の参考モデルとなるものです。とりわけ、オープン前からの広告展開による事前認知の獲得、日本ならではの品質を訴求ポイントとしたブランディング、そして現地パートナーとの密な連携は、業種を問わず応用可能なポイントといえるでしょう。
今後は、会員数のさらなる拡大に向けて、動画コンテンツの質的向上、Webサイト改善を軸としたコンバージョン動線強化、イベント連動施策などが進められる予定です。
WACAでは、ブリッジインターナショナルアジアとの協業を通じて、ウェブ解析士の知見を活かした海外展開支援を推進しています。海外市場でのデジタルマーケティングにご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

