顧客の“検索意図”から考えるコンテンツ戦略

こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。

「一生懸命コンテンツを作っているのに、なぜ読まれないのか?」
多くのマーケティング担当者が一度は抱くこの悩み。その原因の一つに、“検索意図”とのズレがあります。ユーザーがある言葉で検索する背景には、「何か知りたい」「課題を解決したい」「次の行動に進みたい」といった明確な意図があります。その意図を読み解けていないと、せっかくのコンテンツも空振りしてしまうのです。

キーワード選定や構造設計などSEOに関する技術的なノウハウが注目されがちですが、本質的に重要なのは「誰の、どんな意図に応えるのか」という視点です。この記事では、検索意図を起点に、顧客に選ばれるコンテンツ戦略の考え方をお伝えします。

目次

検索キーワードの裏側にある「意図」とは何か?

検索意図とは、ユーザーが特定の言葉を検索する際に「本当に求めていること」です。たとえば「CRMとは」と検索する人がいたとしても、その意図は人によってまったく異なります。

  • 部署内で導入検討が始まり、まず基本を知りたい担当者
  • 上司に報告するため、概要を簡単にまとめたい若手社員
  • すでに比較をしていて、最終的な選定材料を探している決裁者

このように、同じキーワードであっても「背景」「状況」「目的」によって、読みたい情報の粒度も形式も変わります。ただ単に定義や機能を並べただけのコンテンツでは、誰の意図にも刺さらない可能性があるのです。

だからこそ、コンテンツを作る際には、「この検索をしている人は、どんな状況にいて、どんな不安や課題を抱えているのか?」という問いかけを出発点にする必要があります。

なぜ「検索意図」がコンテンツ戦略の中心なのか?

かつての検索エンジンは、キーワードの一致度を重視していました。しかし昨今では、ユーザーが検索行動を通じて「何を求めているのか」を理解し、満足させることを重視するようになっています。

これは、検索エンジンの進化だけでなく、ユーザー自身の行動の変化にも関係しています。購買意思決定プロセスが複雑かつ長期化しており、単発的な情報では意思決定を後押しできなくなっています。

つまり、企業が発信する情報には、ユーザーの検索意図に寄り添い、段階的に信頼を築いていくようなストーリー性と設計がより求められるということです。

検索意図を読み解く3つの観点

検索意図は、主に以下の3つの型に分類できます:

  1. 情報収集型
    「〇〇とは」「〇〇のメリット」など、まだ課題が明確ではない段階で知識や概念を得ようとする意図です。
  2. 比較・検討型
    「〇〇 比較」「〇〇 評判」など、選択肢を絞り込むために客観的な情報を求めている段階です。
  3. 行動・決定型
    「〇〇 申し込み」「〇〇 導入事例」など、具体的にアクションを起こす意図です。

この3つの意図は直線的に進むものではなく、行ったり来たりを繰り返します。そのため、自社サイトの中にすべてのフェーズに対応できる情報があることが理想的です。

重要なのは、「自社サービスに近いキーワード」だけに目を向けず、見込み顧客がまだ課題に気づいていない段階や、関連領域の関心から入ってくる場合にも備えておくことです。顧客の“前段階のニーズ”に寄り添う姿勢が、最終的な接点を生む鍵になります。

コンテンツ設計は“検索意図のジャーニー”を意識する

ユーザーは、検索という行為を通じて、自分の頭の中を整理したり、課題を明確にしていきます。企業側が意識すべきは、この検索行動に合わせて情報を設計することです。

たとえば、以下のような形で情報提供を分けていくと、ユーザーの動線を自然に設計できます。

  • 認知フェーズ:「課題に気づく」きっかけになる情報
    (例:「離職率が高い原因とは」など)
  • 検討フェーズ:「選択肢を知る・比較する」ための情報
    (例:「人事管理システムの比較」「導入企業の事例」など)
  • 決定フェーズ:「自社が選ばれる理由を示す」情報
    (例:「導入効果シミュレーション」「料金・サポート体制の案内」など)

これらの情報をバラバラに用意するのではなく、内部リンクや構成を工夫して、ひとつのジャーニーとして接続する設計が大切です。

顧客と向き合うことが、検索意図を理解する近道

検索意図を机上で考えるだけでは限界があります。現場の営業やカスタマーサクセス、問い合わせ対応をしている部署には、顧客が「実際に何に困っているのか」という生の声が蓄積されています。

たとえば、営業がよく受ける質問、よくある反論、検討が止まる理由…。これらは、実は検索意図の宝庫です。検索ボリュームには表れにくくても、本当に価値のあるコンテンツを作るためのヒントになります。

マーケティング部門が社内の“顧客理解ナレッジ”を活用し、実際の検索意図と照らし合わせることができれば、より本質的で成果につながるコンテンツ戦略が見えてきます。

さいごに

いかがでしたでしょうか?

今回は検索意図を軸にしたコンテンツ戦略についてお伝えしました。SEOなどの技術的な話ではなく、顧客の心を読む戦略面にフォーカスしてお話をしました。どんなに検索順位が上がっても、ユーザーの疑問や期待に応えられなければ成果にはつながりません。

検索意図を意識することで、マーケティング活動はより「相手起点」になり、信頼性のある情報提供へと変わります。それはひいては、企業ブランドの強化、商談化率の向上、売上貢献にもつながる重要な取り組みです。

キーワードの“向こう側”にある人の気持ちに、私たちはどこまで寄り添えているか。
コンテンツ戦略を見直す際には、ぜひ「検索意図」というレンズを通して、顧客との新たな対話を始めてみてください。

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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