
このまま今の会社で走り切るのか、それとも新しい道を探るのか。50代の節目は、多くのビジネスパーソンがセカンドキャリアの足音を意識し始めます。「仕事とデジタルマーケティングと資格」をテーマに、ウェブ解析士協会会員の働き方を深掘りするインタビュー。第108人目は、これまでの経験をさらにアップデートさせ、会社へ恩返しするウェブ解析士マスター、井上 雅史(いのうえ まさふみ)さん。2025年3月に上級ウェブ解析士を取得後すぐ、ウェブ解析士マスターに挑戦し合格しました。若手育成において資格をどう活かせるのか、今後の期待と実感を伺いました。
(インタビュー:チーフSNSマネージャー 毛利 美佳、編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
50歳の挑戦。若手マーケターの後押しと力試し
―― 前回のインタビュー(2025年5月実施)で、ウェブ解析士マスターにも挑戦したいが、迷っているとお話していましたね。なぜ、マスターにも挑戦されたのでしょう?
井上さん:理由は3つあります。1つは、50歳になりセカンドキャリアが見えてきた中で、会社への恩返しとして、デジタルマーケティングやCXの領域が今、全社的に重要な領域となっていることを踏まえ、自分のスキルを活かして社業の発展に貢献できるのではないかという想いがあったこと、また自分がいなくなった後もこの領域を牽引していってくれる社内の若手から次世代マーケターを育てたい想いがありました。
2つ目は、インターネット黎明期から、デジタルマーケティング業界に携わってきたキャリアを証明したい。勲章が欲しかったんですね。
3つ目は、自分への挑戦です。長くデジタルマーケティングに携わってきた自負はあるものの、社外の一般市場や業界の中で自分の力がどこまで通用するのか試したかった。この3点が大きな動機です。
―― 受験を決意したとき、課題や不安に感じたことはありましたか?
井上さん:やはり、社業の業務だけでも多忙な中で学習時間をどこまで確保できるかが一番の不安でした。
ウェブ解析士の最上位資格ですから、自分のスキルがどこまで通用するのか分からない点も不安でしたね。
―― 実際にマスター講座を受講されて、特に力を入れたことや意識したことは何でしたか?
井上さん:オリエンテーションで「一般のお客さまに提案できるレベルが求められる」と聞き、ソリューションへの知識、知見だけでなく、提案書などのアウトプットの質も意識しました。
また、これまで私がしてきた社内の担当者向けの講座では、参加者の知識・リテラシーをあまり気にする必要はありませんでしたが、ウェブ解析士マスターになるならば、受講生のレベル感や立場に合わせて伝えなければダメだと強く意識しながら実践しました。
長年の経験に、知識と実践を重ねて合格を掴み取る
―― マスター講座では、約50ページにも及ぶレポートを2種類作成すると伺いました。どのようなレポートですか?
井上さん:ウェブ解析士マスターの要件には、「マクロ解析レポート試験」と、「ミクロ解析レポート試験」の合格があります。
マクロ解析レポートは、簡単に言えば、事業の成果達成に向けた戦略全体の提案書です。ミクロ解析レポートは、同じく事業の成果達成に向けた、利用ユーザーの満足度を上げるための提案書です。
――それぞれ50ページ、分析結果と戦略をレポートにまとめるんですね。制作で特に苦労したところは?
井上さん:ボリュームの多いレポートを、ゼロから体系立ててまとめていく苦労はもちろんのこと、自分の考えや知見をもとに組み立てたレポートが、採点者に意図どおり伝わらない場面が何度もありました。そのたびに俯瞰して見直して、試行錯誤しながら進めたのが印象に残っています。
―― その壁は、どのように乗り越えられたのでしょうか?
井上さん:同時期に受講した、「Tableau(タブロー)」というBIツールの資格で、「DATA Saber(データセイバー)」というものがあり、その中で「プレアテンティブ・アトリビュート」という考え方を学び、非常に役立ちました。
これは、レポートを見た人が瞬間的に(無意識的に)内容を理解できるようにするための考え方です。
これまでも、社内のレポーティングなどで忙しい役員や上長向けにする際になんとなく意識していたのですが、理論にもとづいて自分の中に落とし込めたので、非常に役立ちましたね。
――50ページもの提案書ですから、分かりやすく伝える工夫は大事な要素ですもんね。
井上さん:そうなんです。だからこそ、作成したら自分の思考を離れ、これは一瞬で理解できる表現か、資料を読み解く側の立場でチェックし、修正を重ねていきました。
―― 一方で、講師役を実践するロールプレイ試験はいかがでしたか?
井上さん:とにかく緊張しました。普段、社内で教える機会はあっても、対象が部下や仲間でしたが、今回は一般の受講生をモデルに進んでいくので。教科書どおりの言葉ではなく、自分らしい言葉に置き換えるよう意識しました。
これまで使ってきた自分の言葉で、正しく、分かりやすく伝わるのか常に考えていましたね。
―― 受講前は、学習時間の確保が不安だったとお話されていました。実際、どのように時間を捻出されたのですか?
井上さん:正直、ここは気合の範疇でした(笑)。通勤時間や、趣味のウォーキングをしながらレポートの構想を練り、帰宅したら一気にPCで打ち込むような日々でしたね。
受講前に先輩のウェブ解析士マスターから「3カ月間は仕事以外の時間はすべて使うつもりで」と聞いていたのですが、まさにそのとおりになりました。
ただ、普段は触れない社業以外の課題に向き合う時間が楽しかったです。みなさんも、あまり難しく考えずに、楽しんで取り組むのが一番だと思いますよ。

自分らしい講座スタイルで、業界全体の後進育成に励みたい
―― 資格を取得して、ご自身の中でどのような変化がありましたか?
井上さん:知識面もさることながら、アウトプットに対する意識と責任感が格段に高まりました。そして何より大きかったのは、社外の仕事でもやっていけそうな自信がついたことです。この自信が、後進育成に取り組む上でも後押しになりました。
―― 講座の中で、特に印象に残るフィードバックはありますか?
井上さん:自分自身は比較的、壁を作らないフランクな性格だと自覚しているものの、講師らしく振る舞おうと少し堅苦しく説明してしまって。
その時、先輩から「井上さんは井上さんらしく、そのキャラクターや言葉を使って教えた方が伝わるんじゃないか」とアドバイスをいただいて。
その一言にハッとしましたね。確かに、自分らしく話す方が伝わるし、自分自身も飾らずに楽だと気づかされました。そこから講義のスタイルが大きく変わったと思います。
―― 資格取得は、実務にも活かしていますか?
井上さん:はい。社内でのレポーティングや改善施策の提案など、あらゆる業務の精度が高まったと感じます。また、私の姿を見て「自分もマスターを目指してみたい」と言ってくれる若い社員が出てきたのは、何よりうれしい変化です。
―― マスターとして、今後はどのような挑戦をしたいですか?
井上さん:デジタルマーケティング人材が不足しがちな地域の中小企業を支援し、地域に貢献できるようになっていきたいです。
もうひとつは、若手デジタルマーケターの育成です。この仕事の面白さを若い世代に伝え、彼らが成果を出せるまでサポートしたいですね。
―― 最後に、ウェブ解析士マスターに興味はあるけれど、一歩踏み出せずにいる方へメッセージをお願いします。
井上さん:「大変だ」と何度も言いましたが、本当に大変です(笑)。ですが、挑戦すれば確実に何かが変わります。周りのウェブ解析士マスターの方々も非常に親身に支えてくれますし、不安はあると思いますが、始めてみれば何とかなるものです。
迷うなら、チャレンジしてほしいなと思います。
あとがき
今回のインタビューで印象的だったのは、井上さんが50歳という節目を「チャレンジのタイミング」として捉えていたことでした。経験に甘んじず、自分の可能性を試し続ける姿勢は、多くの方の背中を押してくれるはずです。特に「自分らしい言葉で伝える」という気づきは、資格や肩書きを超えた大切な学びだと感じました。
ウェブ解析士マスターへの挑戦は決して楽ではありませんが、その先には確かな成長があるのだと感じさせられるインタビューでした。どなたかの小さな一歩のきっかけになれば幸いです。
関連リンク
NTT西日本の「情シスおまかせコンシェルジュ」CM動画「Nにしよ。情シス業務のどうしよう」篇:https://youtu.be/VCgwKiTY4yY?si=Dxh0NF11I-mU3L9V
NTT西日本の「フレッツ 光クロス」CM動画「光も、Nにしよ。割引篇」:https://youtu.be/OD4cQCuEr88?si=E3qFsAZaCfx9A7Zs
情シスおまかせコンシェルジュ:https://business.ntt-west.co.jp/smb/nnishiyo.html
NTT西日本 ナビットさんのにんじん畑からこんにちは:https://flets-w.com/navitsan/
