「仕事とウェブ解析士」をテーマにお送りするウェブ解析士インタビュー。41人目はウェブ解析士マスター、阪本健太郎さんです。日本社会に対して自分の知見やスキルを貢献したいと感じ、去年2020年に独立。コンサル会社が参画できない規模のベンチャー企業に個人として入り込み、精力的に活動されています。ウェブ解析士の資格や上級以上を検討されている方は、実践で活かされる現場のお話が参考になるのではないでしょうか。
(インタビュー・編集:ライター 髙橋俊至)
デジタルマーケティングに一つの答えがあると思った大学時代
―― ウェブ解析士マスターの資格を取得したきっかけはなんでしょうか。
阪本健太郎さん(以下、阪本):江尻代表の下で働く機会があり、ウェブ解析士を取得したことがきっかけです。実は、大学在学中最後の1年は東京で江尻さんの下で働いていたのです。時を遡ると大学進学の時ですかね。。初めて東京から名古屋へ行ったときに、文化の差を感じました。経済圏としては規模があるため名古屋内で完結してしまっている印象を受けたのです。
大学自体は旧帝国大学ということもあり、高度な教育機関として、理学部でしっかり学べていました。しかし、ここに居続けたら自分の人生に良くないなと思ったんです。「早く、勉強や学業を修了し東京で働かなきゃ」って思ったこと、そして国際開発学や経営学をリベラルアーツとして学んだ際に「資本を回し、社会に貢献する」ということに興味を持ったことが大きいです。
―― 東京に来て、資格を取得されたのですね。
阪本:はい。メーカー、財閥系の商社や、投資銀行も見ましたが早めにベンチャー企業や外資系の会社の内定を得る中で、日本社会の問題や現実を知る機会がありました。一つとして、世界ブランドランキングで代表されるように日本のプロダクトの競争能力が徐々に下がっていく中、デジタルマーケティングというところに一つの答えがあるのではないかという気持ちもあったんです。
色々調べていくと、電博や朝日新聞などのマスメディア業界も徐々にウェブ解析士の資格を取り始めていたり、法人で契約している会社も増えていると。そこでウェブ解析士協会に連絡を取って、江尻さんとランチ(https://www.waca.or.jp/member/WAC21213513/)をして、協会にジョインしました。
―― なるほど、ウェブ解析士協会に働き始めたのがきっかけなんですね。ウェブ解析士をマスターまで取ろうと思ったきっかけはありますか?
阪本:事業の成果に貢献するために、より高度なOutputや分析をできるようになりたいと感じたのが理由です。実際、関わったマスターの方々はめちゃくちゃ優秀な人が多かったですし。上級、マスターで求められる成果物はなかなかですよ。
―― 大学卒業後はアクセンチュアに入社されてますが、現場では資格は生かされてるなと感じることはありましたか。私が、ウェブ解析士の資格を取ったばかりなので、参考に。
阪本:アクセンチュアでは、Strategy&ConsultingのApplied Intelligenceという部署で働いていました。今のコンサル会社は、戦略だけ描きましょうというのは価値がないと言われます。絵を描くだけじゃなくて、よりどのようにビジネスやモノをつくっていくか、モノを作っていくときに、どういうプロダクトであれば、価値があるのか。ITの会社であれば、ITシステムを導入するわけですが社内外においてUXはもちろん考えないといけないです。UXありきで物事を検討するのは極めて重要かと。
ビジネスの話ができることが大前提
―― 取得後に変わったことはありますか?
阪本:ウェブ解析士ですと、自分の知識が増えることがメリットで、対社会的な意味では、上級やマスターになってようやく、というところだと思います。ウェブ業界の場合は社内の教育制度で、上級ウェブ解析士の取得を奨励していたりしているんですよ。
ウェブ解析士マスターは、アクセンチュアでも私だけだったと思うのですが、ウェブ解析士マスターはミクロレポート、マクロレポートがかなりのレベルが要求されるため、レポートを見せると大体の人が納得してくれる。自分の評価を握る人に説明するときに、こういう成果物をつくり、こういう評価で取れましたと説明すると結構刺さってました。そういうメリットはあります。また、経営層や幹部クラスの方々と会話をするときには、視座が高い会話に自然となれるかと思います。
―― そうですよね。
阪本:一般的なシステム担当者は、システムの視点でしか話ができないので、事業責任者や経営陣とのコミュ二ケーションコストがかなりある。そこに対して、私は両方理解しているので、ITの世界で良く言われる、上流工程を依頼されやすい。ITの機能の話しかできない人に、ビジネスの高度なことを任せないですよね。ファーストステップとして同じ土俵に上がる事が大事です。
―― クライアントからお仕事を頂いたときにまずやることは何でしょうか。決めていること。オリエンからの広げ方やウェブ解析士の学びを活かせるところなどありますか?
阪本:ロジックツリーは知られているけれど、しっかり作れる人はあまりいない。基本CXO(CEO,CTO,COOなど取締役同等)クラスの人は経営に関する情報が多すぎて、判断材料が必要だったりします。私はIT業界の方と仕事をすることが多いんですけど、絵をきれいに描いてあげて、こういう観点でこうしますというところまで言い切れると違います。
ユーザーエクスペリエンスを可視化してあげて、ここに最新技術を使って改善していきましょう。というのは、マーケティングの知識が本当に役に立つんですよ。「今こういう体験があるけど、こういう体験にしなきゃいけないよね。」とかはシステムの視点だけだと絶対に出ない話なので。「こういう顧客体験を描いたほうがいいよね」というところから、システムありきではなくて、目的ありきで話ができるというのも強みだと思います。
―― 現在の独立されてからの働き方についてお伺いしてもよいですか。
阪本:私が契約しているのは3社となります。ちょっとずつ契約形態は違っていて、1社はプロダクトマネージャーとして、AIのプロダクト設計、開発、関係者の折衝をしています。そこでは比較的長い労働時間を提供していますが、他の2社は、特定の知識と経験を活用し、プロフェッショナルサービスを提供する、所謂コンサルというカタチに近いです。
私はAI、数理最適化、アルゴリズムとそれにまつわるプロダクト開発にまつわる経験と実績があるのでかなり面白い仕事をさせていただいており、その場合、クライアントさんにはあえて焦点を絞って話をしているんですけど、CTOやCOOの方とビジネスの会話をしていると、自然ともっと行けそうだから「これもやってください、どうでしょうか?」というのはあったりします。
―― プロダクトを制作するにあたってプログラマーやプロダクションにお願いすると思もうのですが、気を付けていることや求めていることってありますか?
阪本:相手のプロトコルに合わせる、でしょうか。言葉って人によって定義が違ってくるので相手の定義に合わせるようにしています。大体鉄板の書き方、鉄板のコミュニケーションツールでやるようにはしています。デザイナーの方だと、今はFigma(フィグマ)でのコミュニケーションが主流だったり、、、
―― Figmaってなんですか?AdobeXDのようなソフトですか。
阪本:そうです。アドビのプロダクトは歴史的にはローカルで開発するのが前提なんですが、Figmaはクラウド上で、メールで招待されると、ジョインでできてコメントを付けたり、クラウド上ですべて完結するイケてる機能があります。
上流に入り込むためのウェブ解析士マスター
―― そいうことがウェブ解析士の方は知りたいと思います!ソフトのところで、ウェブ解析で使っているツールありますか?テキストには参考で載っていますが、実際どのくらい使用しているのかなと思うことが多いので。
阪本:SEOの仕事であれば、ある程度決まっています。SEOなら、Google トレンドやGoogle キーワードプランナーですかね。SEO以外であればあまり決まってないと思いますが無理やりあげるならTableauやClick Senseでしょうか。
分析ツールは、各社内で実は持っているんですよね。各会社に色があって、「いかに、データを加工できるか」「インサイトに結び付けられるか?」と言うのが腕の見せどころになります。
CSVをエクスポートする機能はほぼ必ずあるので、エクスポートしたデータをいかにインサイトにつなげるか。資産につなげるか。腕の見せ所なのかなと。そのような考え方をウェブ解析士で学ぶという風にした方がいいと思います。
―― 僕は、クライアントさんからデータが出てきたこと1回もないですね。。職種の違いかもしれませんが。
阪本:私は比較的若いIT企業と仕事をしているからかもしれません。企業のデータを使う前提で仕事をしているケースが多いので。
―― クライアントさんは、GAや解析ツールを導入しているのは理解しているのですが、扱ったことがないので、権限もなかなかどこの部署に聞けばいいのかと右往左往していることはよくあります。
阪本:私は幸いかもしれませんね。。。
―― 阪本さんは、コンサルティングですので、上流から入るケースが多いので入りやすいと思うのですが、作る側が「見せて頂けませんか」と言っても、「どうしよう」ってなることがあります。
阪本:上流に入り込むためのウェブ解析士マスターという考え方はあるかと。。
―― 今の話しを聞いて、ウェブ解析士マスターまで目指そうかなと思いました。
阪本:まじでしごかれますけど、それなりに意味はあります。
SNSを推奨しない理由
―― コンサルティングの話しで、SNSの話は出ると思うのですが、どう考えてらっしゃいますか?
阪本:私は結論からいうとSNSは推奨していないです。2分化していると思う。SNSの運用にはコストがかかります。SNSを広告を一つのジャンルと捉えて、代行業者に依頼したほうが費用対効果が高い気がします。
自社メディアを運用していくのは、専属の人を付けないといけないので、代行できるのであれば代行に任せてしまったほうがいいと考えています。SNSと相性が良い企業がどのくらいあるのか、誰も証明できないと思いますし、いきなり大規模なリソースを割くのはリスキーかな?と見ています。
―― SNS反対派ですか。
阪本:みんな身近ですので会社でもSNSやりたいって思うのですが、SNSのトランザクションはITのプロから言うと、そこで露出するのは相当きついぞとというくらいの情報量なんです。バズったらすごいけど、バズるって再現性あるのかというと、現実味がないのではないかな。。。
お金があるのであれば、代行業者にお願いしてしまって、育ててもらってある程度自分たちでできるようになったらやるのがいいと思います。最初から本腰でSNSをやるのは、きついと思っています。私はオウンドメディア推奨派です。SNS擁護派もいるかと思います。
―― いろんな方の意見は聞いてみたいですね。
阪本:しかし、YouTubeチャンネルは、次世代のオウンドメディアとして、価値はあると思っています。今までは紙(ページ)のウェブサイトだったのが、動画になり情報量が増えていって、ウェブサイトからYouTubeチャンネルにを見に行くというスキームは出来てきたと思います。
動画メディアではYouTubeは最強だと思います。データ的にもほぼ揺るがないと思っています。
日本の将来性のある企業を助けたいから独立した
―― 去年会社勤務から独立して、複数契約されていると思うのですが、仕事の仕方は変わりましたか?
阪本:確実に変わったのは、仕事の幅、選択肢は圧倒的に広がりました。アクセンチュアは比較的幅が広い会社にはなります。インタラクティブと呼ばれる、電通や博報堂とコンペしていこうという部署もあり、ストラテジーの部門もあるし、データ分析の部門もあるし、システム開発の部門もあります。
ただ、大きい企業は、大きい売上を取りに行こうというのがある。上場会社の力学ってのが働くので、クライアントが限られるんですよ。会社として考えると、私に降りるお金の数倍以上とかの単価で企業に取りに行くんですよ。
そうすると、クライアントも大企業にならざるを得ないんです。儲かっている大企業というのが正しい言い方なんですけど。そういう大企業だけの仕事って、大きいものを切り分けるというのは事実なので、、、今だと私個人が、一つの企業で数十万円ほどいただければ、生活できるわけですよ。
助けたい日本の将来性がある企業に、「コンサル会社に発注すれば数百万かかるけど、数十万で雇えますよ、しかも私はトップ評価で昇進しましたし、実績も経験もあります」という話になります。個人間契約の方が僕は社会として健全だと思っています。大企業は仕組みを学ぶっていう観点では、とてもいいと思いますけどね。
――なるほど、勉強になります。ウェブ解析士の魅力ってなんですか。
阪本:言わないです。笑
言わないですけど、協会名簿にはきっちり書いています。周りの方は他者のエゴサーチを結構やってるみたいですね(笑)
―― どういうことですか?
阪本:僕が阪本健太郎です、こういことそういう事やってますというキャリアの話をして、時間が経つと、態度が変わる瞬間があって、他の人って結構調べている気がします。人ってどういう会社で働いていたとか、こういう実績があって、とか。資格もその一つですけど、ウェブ解析士の名簿をみると上位に来るので、いい情報を見てもらう戦略です。今年はそういうサーチに関していかにポジティブな情報を出せるかがテーマになっています。阪本健太郎という人を信じてもらうということですね。
―― 自分の解析をして、パーソナルブランディングをしていくということですね。とても参考になりました。ありがとうございました。
あとがき
ウェブ解析士を取得したら、どんなことができるのか、どんなことが大切なのかとても参考になりました。明確に気持ちよく話される阪本さんは、エネルギーに溢れつつ、丁寧にインタビューを受けてくださいました。今後のご活躍も、心より応援しております!
以下のウェブ解析士名簿から問い合わせてみてはいかがでしょうか。