AI活用方針

第1章 この方針について

一般社団法人ウェブ解析士協会(以下「WACA」)は、教材・講座の品質向上、会員・受講者へのサービス改善、業務の効率化のためにAIを活用します。

本方針は、WACAがAIをどのような考え方で使い、皆さまからお預かりした情報をどのように扱い、どこまでを人が責任を持って判断しているかを、対外的に説明するものです。

WACAは、AIを人が自分の意思で考え行動するために使うこと、AIを使うかどうかは本人の選択を基本とすること、AIを使った判断と行動には人と組織が責任を持つことなどを「AIポリシー原則」として定め、本方針を含むポリシー群の上位に置いています。

WACA内部の詳細な運用ルールは別に定めています(内部AIポリシー、部署別AIポリシー、運用ガイド)。本方針はその要点を、外部の皆さまに向けて公開するものです。

第2章 基本的な考え方

2-1. AIを積極的に活用し、共通ルールは必要最小限に

WACAは、AIを積極的に活用しながら、安全かつ適切に利用するための共通ルールを定めています。

全員が守るべきルールは必要最小限にとどめ、それ以外の具体的な使い方や運用方法については、業務の内容やリスクに応じて、各部署・各担当が定めます。

2-2. AIに任せる範囲と、人が担う判断

AIは、文章作成、情報整理、分析、定型処理などの業務支援に活用します。最終的な判断と責任は人が負います。利用目的とAIに任せる範囲、および次の重要な判断は人が決定します。

  • 認定の可否
  • 契約に関する判断
  • 法的な判断
  • 懲戒に関する判断
  • 会員対応方針の最終判断
  • WACAとしての公式見解
  • WACAとしての最終意思決定

これらを含めて、個人や組織の権利・資格・金銭・評価・契約・社会的信用に実質的な不利益を生じさせ得る重要な意思決定にAIの判断や解釈が関わる場合は、人がAIを使い、人がすべての案件の内容を確認して決定します。こうした決定を自動化することはありません。

WACAの名義で発信する内容については、WACAが責任を負います。担当部門は、内容の確認と必要な承認を行います。AIが作成した文章は、事実関係、日付・名称・数値・制度・料金、公式方針との整合性、権利関係、表現の適切さについて、担当者の責任で確認・修正したうえで公開します。

確認の方法は業務ごとに定めます。すべての出力を1件ずつ確認する方法のほか、確認基準をあらかじめ定めたうえで抜き取りにより確認する方法、異常を検知したときに確認する方法をとることがあります。いずれの場合も、確認した責任者と、確認・修正の方法を記録します。

2-3. 制度とシステムの設計方針

WACAは、AIの利用を一律に厳しく監視・制限するのではなく、安全かつ便利に利用できる環境や仕組みを整えることを重視します。

適切なツールや利用方法を用意することで、必要な利用記録が残り、問題や改善点を確認しながら、継続的に運用を見直せる状態をめざします。

また、AI利用による影響の大きさに応じて確認や承認の方法を変えます。影響が小さい利用は簡便に行えるようにし、個人や組織への影響が大きい利用については事前の確認や必要な承認を行います。

第3章 情報の取り扱い

WACAは、扱う情報を三つに分け、それぞれの方法で活用しています。

本方針でいう「WACAが安全性を確認した環境」とは、入力した情報がAIの学習に使われないこと、および利用条件・保存期間・アクセス管理・守秘義務が確認されていることを満たす環境です。あわせて、安全性を確認した環境であっても、機密情報・個人情報・営業秘密を必要以上に入力しないことを運用の原則としています。

3-1. 全員が必ず守る共通ルール

WACAでは、業務の種類やAIの利用方法にかかわらず、次の四つのルールを共通して適用します。

  1. 個人情報や認証情報を適切に扱う 氏名と連絡先など個人を特定できる情報、決済情報、ID・パスワードなどを、安全性が確認されていないAIサービスや環境に入力しません。
  2. WACAの重要な情報資産を保護する 試験問題の全量や正答一覧、会員・顧客情報の一覧など、漏えいした場合に大きな影響が生じる情報を、外部のAIサービス等にそのまま入力・提供しません。
  3. 機密情報・非公開情報を適切な範囲で利用する 機密情報やWACA内部の非公開情報は、その情報を利用する権限や目的の範囲を超えてAIに入力したり、別の用途に利用したりしません。
  4. 重要な判断をAIだけに任せない 業務の目的、AIに任せる範囲、成果物の確定、外部への発信など、業務上の重要な判断は人が行います。

なお、情報を一部削除したり、複数回に分けて入力したりすれば安全になるとは限りません。複数の情報を組み合わせることで、個人や元の情報を特定・復元できる場合もあるため、情報全体の性質を踏まえて取り扱います。

3-2. 皆さまからお預かりする情報について

会員・受講者・申込者・講師の個人情報、アンケート結果、問い合わせ内容は、氏名・メールアドレス・会員番号などを削除・仮名化・集計化したうえで活用することを原則としています。名簿等の全件データは、AIに渡さず手元のツールで処理し、AIには処理手順の作成のみを任せています。

個人情報の取り扱いは、関連法令およびWACAの個人情報保護方針に従います。

3-3. WACAのコンテンツの扱い

WACAの教材、試験問題、公開資料をAIの学習や生成に利用することの可否は、各コンテンツの利用規約によります。利用規約で認めていない複製・学習利用・再配布は、AIによるものであっても認めません。

第4章 試験・認定業務におけるAIの利用

WACAは、教材構成案の作成、説明文のたたき台作成、練習問題のアイデア出し、問題文の分かりやすさの改善、解説文の表現調整、想定質問の洗い出しにAIを活用しています。

一方で、次の判断は必ず人が行います。

  • 正答の決定
  • 採点基準の決定
  • 評価基準の決定
  • 合否判断
  • 認定の可否判断
  • 試験品質に関わる最終判断

試験問題、正答、採点基準、評価基準を扱う必要がある場合は、WACAが安全性を確認した環境で、担当部門が定めた必要最小限の範囲に分けて扱います。丸ごとの入力は行いません。

受験者の皆さまへ: 試験でのAI利用の可否は、試験ごとに異なります。各試験において認められていないAIの利用は、受験規約に基づく対応の対象になります。試験ごとの規約と、試験官・講師の指示に従ってください。

第5章 AI利用の明記と、提供するサービスでの説明

5-1. 教材・公開資料におけるAI利用の明記

教材、ウェブサイト上などの公開資料、受講者・講師向け配布物の作成・改訂にAIを利用した場合は、その経緯と詳細を明記するよう努めます。

誤字脱字の修正や表記ゆれの確認など、内容の創作に関わらない補助的な利用については表記を省略することがあります。

個別の試験問題や作成経緯の詳細は公開しません。一方、作問・採点・認定業務におけるAIの利用範囲と、人による確認・修正の方針は説明します。

5-2. 自動回答と人の確認の表示

問い合わせへの回答などをAIが自動で作成する仕組みを使う場合は、その回答が自動回答であることと、人に問い合わせる方法をお示しします。人がすべてを確認していない運用で、すべてを人が確認したと受け取られる表示はしません。

5-3. 提供するサービスの品質基準と保証する範囲

AIを使って提供するサービスについて、WACAは求める品質、許容できる誤りの範囲、誤りが起きたときの対応を定め、分かりやすくご説明します。品質基準や保証する範囲を変更する場合は、必要な合意を得ます。

5-4. クライアントとの合意と開示

法人・団体・個人から業務を受託し、またはサービスを提供する際にAIを使う場合は、AI利用の可否と範囲を事前に確認し、合意します。求められたときは、AIを利用したかどうか、どの業務にどのように利用し、その結果をどう検証したかをご説明します。開示にあたっては、個人情報や他の関係者の機密情報を保護します。

第6章 事故が起きたときの対応

誤情報の公開、個人情報や機密情報の誤入力、AI出力に起因する苦情、権利に関する問題などが発生した場合は、速やかに影響を確認し、必要な利用停止・訂正等を行います。影響に応じた関係者への連絡、判断の見直し等を行い、再発防止に取り組みます。

WACAは、発生を隠さずすみやかに報告することを最優先にします。また問題を報告したことを理由として、報告者に不利益な取扱いを行いません。事例は個人が特定されない形に要約し、再発防止のための知見として蓄積します。

AIを利用した判断支援について説明や訂正を求められた場合は、どの工程でAIを使い、人が何を確認したかをご説明します。誤りがあれば訂正します。

AIを使った評価・採点・対応によって影響を受けた方が、理由の説明や判断の見直しを求められるよう、相談窓口をWACA事務局に置き、申し出を受けて確認・対応する担当者を定めています。申し出を受けた場合は、本来の判断基準に照らし、ご本人の事情やAIが捉えていない情報も考慮して確認します。

第7章 運用体制

WACAは、AIポリシー承認者、AIポリシー管理者、AIポリシー推進者、各部署責任者を置き、役割を分けて運用しています。

役割担うこと
AIポリシー承認者ポリシーの最終承認と重大事案の判断
AIポリシー管理者ポリシーの管理、改訂案の作成、記録の確認、運用状況の確認
AIポリシー推進者相談の一次窓口、テンプレート整備、教育、活用促進
各部署責任者自部署のAI利用の管理と部署別ポリシーの作成・維持

なお「上級AIポリシー管理者」はWACAが運営する資格の名称であり、上記の役割とは別です。

第8章 参照する外部の枠組み

  • AI Fluency Framework(4D) — Delegation(委任)、Description(説明)、Discernment(識別)、Diligence(誠実な対応)を参照し、AIの活用を軸としたWACA独自のポリシーを作成しています。4Dは必須ルールとしてではなく、参考概念として扱います。
  • ISO/IEC 42001 — AIマネジメントシステムに関する国際規格として、運用体制を検討する際の参考基準としています。
  • ITコーディネータ協会「中小企業向けAX推進ガイドライン」、総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン」ほか — 管理項目の確認に参考としています。これらへの準拠を宣言するものではありません。

第9章 改訂

本方針は、関連法令・制度の変更、重大なインシデントの発生、AIサービスや技術環境の大きな変化、WACAの業務内容や運用体制の変更があった場合、および年1回の定期見直しの際に見直します。

改訂はAIポリシー管理者が起案し、AIポリシー承認者の承認をもって決定します。

第10章 WACAのAI活用基盤 WACA Loop

WACA Loopは、AIポリシーに基づく運用を支援し、AI利用を支援・記録・監視するとともに、組織内の知識を有効に活用するための基盤です。

10-1. 仕組み

WACAは、公式情報や業務上の知見を、利用者の権限に応じて参照・共有するための基盤「WACA Loop」(旧Learning Loop)を運用しています。

WACA Loopは、WACAの用語、過去の判断とその理由、業務ルール、テンプレート、確認手順、活用事例を、利用者の権限に応じて参照できるようにする仕組みです。あわせて、AI利用の要約を記録します。利用台帳には、利用目的や確認者などの記録と要約を保存し、入力した文章の原文は保存しません。

10-2. 基本方針

WACAは、この仕組みを通じて、事務局・委員会・各部署が同じ判断基準でAIを使えるようにし、うまくいった進め方を組織の共有資産としています。第2章3項に述べた「安全で便利な仕組みを整え、記録を自然に残す」という考え方を、具体的な形にしたものです。

10-3. 現在の対象範囲

WACA LoopはWACAの業務を対象とする仕組みです。会員の個人情報は、試験や講義で必要な場合を除き、取得・参照しません。会員や有資格者が所属する企業やそのクライアントの情報も、原則として取り込みません。

お問い合わせ

本方針に関するお問い合わせは、WACA事務局までご連絡ください。

参考・引用

本方針は、AI Fluency Frameworkの4D——Delegation(委任)、Description(説明)、Discernment(識別)、Diligence(誠実な対応)——を参照して独自に作成したものです。

Copyright 2025 Rick Dakan, Joseph Feller, and Anthropic. Released under the CC BY-NC-SA 4.0 license.

改訂履歴

版日付主な変更
v0.6.22026-10-04第1章に「AIポリシー原則」への言及を追加。2-2に重要な意思決定の定義と、自動化しない旨を追加。確認の方法に異常検知時の確認を追加。3-3(WACAのコンテンツの扱い)を新設。第5章を「AI利用の明記と、提供するサービスでの説明」とし、自動回答の表示、提供するサービスの品質基準と保証範囲、クライアントとの合意と開示を追加。第6章に相談窓口と担当者を追加。第7章に「上級AIポリシー管理者」が資格名である旨を注記。第8章に参照する枠組みを追加。第10章の定義を更新。正本を Git(wacasg/waca-ai-policy)の Markdown とした。
v0.6.12026-09-28例外なく適用される四項目の呼称を「共通ルール」に統一(v0.5から維持。①②④も同じ呼称に揃えた)。末尾にAI利用の記載を追加。
v0.62026-09-27章に「第N章」を付与(④の体裁に統一)。見出しから結論・長い説明句を外し、内容を指す形に変更(2-2「最終的な判断と責任は人が負う」→「AIに任せる範囲と、人が担う判断」、2-3→「制度とシステムの設計方針」)。第10章を仕組み・基本方針・現在の対象範囲の三節に整理。試験でのAI利用の可否が試験ごとに異なることを明記。運用体制と参照枠組みを表形式に整理。呼称は「共通ルール」を維持(①②④も同じ呼称に統一)。改訂履歴を表形式に変更。
v0.52026-09-14レビュー反映(中野)。共通ルールを四項目に整理。抜き取り確認の許容を明記。WACA Loop(旧Learning Loop)に改称し第10章として独立。「協会」表記をWACAに統一
v0.32026-08-26有資格者・会員向けの行動指針を④へ分離し、WACA自身のAI活用方針の対外公表版として書き起こし

v0.3以前の詳細な検討経緯は、WACA内部のAIポリシーフォルダに保存しています。

本方針は、AIポリシー管理者が方針と条文の骨格を定めたうえで、下書きの作成、表現の調整、関連文書との整合の点検にAI(Claude、ChatGPT)を利用し、AIポリシー管理者が全文を確認・修正して最終確定したものです。理事会の審議事項については、審議結果を反映しています。

確認・修正の最終責任者:AIポリシー管理者