
「仕事とデジタルマーケティングと資格」をテーマに、ウェブ解析士協会会員の働き方を深掘りするインタビュー。105人目は、山梨県で求人媒体のマーケターとして幅広く活躍する保阪 哲哉(ほさか てつや)さん。資格取得の背景には、企業ごとの良さ・魅力をもっと多くの人へ伝えたい思いがありました。今回は、資格がもたらした変化について語っていただきました。
(インタビュー・編集:ウェブ解析士 ふじねまゆこ)
中小企業の熱意を、求職者の方へ伝えたい
――保阪さんは山梨県で採用関連のデジタルマーケティング支援に携わっていると伺いました。具体的にどのようなお仕事をされていますか?
保阪さん:主に中小企業のお客様を対象に、採用活動を支援する会社で勤務しています。私はその求人系メディアの運営に携わっており、コンテンツ作成に伴う取材やLP制作、広告運用、ディレクションがメイン業務です。
――クライアントの課題感に傾向はありますか?
保阪さん:「採用の重要性は分かっているけれど、社内にリソースがない」というお客様が大半ですね。皆さん「ちゃんと伝えなきゃ」とは思っていらっしゃるんです。
――これまでのやり方では採用できないという話も耳にしますね。
保阪さん:おっしゃるとおりです。地方において、広告ですぐ求職者が集まるような企業は、むしろ少数派です。
企業の良さや熱意が伝わるようスポットライトを当て、求職者の方に適切なタイミングで、適切な情報量で届くよう徹底した設計が大事だと考えています。
ウェブ解析の基本に立ち返る良い機会になった
保阪さん:社内で採用マーケティングを学ぶ必要性が高まり、講師としてお呼びした方がウェブ解析士マスターをお持ちだったんです。講師のお話を聞いて、私も挑戦してみたいと思ったのがきっかけです。
保阪さん:いいえ。当時は、講師の教えを実践するだけで手一杯で……。ウェブ解析の基本は、業務で自然と身についていきましたが、当時はまだその道をもっと極めようという気概もなく……。受験したのは、存在を知ってから2年後でしたね。モチベーションが高まりきるまでに、時間がかかりました(笑)。
――保阪さんはウェブ解析士認定講座を受けずに、試験のみ受験されたそうですね。テキストの中で、特に役に立ちそうだなと思った分野はありますか?
保阪さん:ウェブ解析の業務全般に役立つ情報が体系立ててまとまっていますから、ほとんどすべての情報が役に立っていると感じます。
なかでも「エフェクチュエーション経営」という概念は、私個人としても勉強になりました。業務範囲だけでなく、経営の分野も理解を深めたいと思っていたところだったんです。
保阪さん:単純に、「上級ってかっこいいな」と思ったのが正直なところです(笑)。
――受講してみて、特に手応えを感じたテーマや分野はありましたか?
保阪さん:仮説と根拠を考える時、かたよった持論を述べがちだったなと反省する機会になりました。データに準拠し、より正確な提案をすることが重要だと、改めて学べました。
保阪さん:実務の反復にもなり、学びのアウトプットができるようになった点が良かったです。あとは、マーケターとしての「考え方」に変化があったのが収穫でしたね。言われるがまま運用するのではなく、顧客にとって何が成果かをより深く考えるようになったというか。
地域企業の熱意に、もっと寄り添うためにできること
保阪さん:会社が展開している人材採用分野で、より高い価値を生み出したいです。お客様である経営者の皆さまが持っている課題感に、もっと高いレベルで寄り添いたいという思いがあります。
そのために、私自身も経営者マインドを学ばなければならないと思ったんです。自分で何かプロジェクトを立ち上げてみて、それが世の中の役に立つのかを挑戦してみたいな、と。
保阪さん:採用は経営に直結する大事なファクターですから。従業員・求職者の目線に留まっては見えてこない覚悟と、経営者ならではの悩みがあると思ったんです。
今は、どちらかというと採用される側の気持ちに寄り添う風潮があるように感じます。ただ、根本的には採用する側の企業、事業、経営への理解が大事なんじゃないかなって思うんです。
――企業のビジネスモデルと課題を理解しないまま採用活動しても、うまくいかないですもんね。
――そのうえで、保阪さんがさらに考える新しい取り組み、プロジェクトとは?
保阪さん:採用企業のブランディングを進めていく中で、価値観を深ぼったり、風土や文化を言語化したりしていくことが数多くあるのですが、往々にして、閉じられた空間での一人称的な議論で終わってしまいがちです。
私はそこに客観的な第三者の声を重ねることで、もっとリアルで、もっと信頼感の持てる情報発信ができるのではないかと考えています。
保阪さん:例えばお客様の感謝の声とか、従業員同士のクロストークとか。そういったエビデンスをいかにコンテンツとして形にできるかも、応募数や採用数を増やす要因になりうると思うんですね。
「うちの商品はここがいい」より、「〇〇社さんの商品のここがよくて愛用しています」の方がはるかに情報として信頼性が高まります。
「感謝を伝え合う、アットホームな職場です」よりも、実際に従業員から従業員への「こんなとき、〇〇さんの仕事にすごく助けられたんですよ。改めて、ありがとうございます」と談笑している様子をそのままコンテンツ化した方が説得力がありますよね。
――確かに、お客様のリアルな声は誰にもコピーできないですもんね。
保阪さん:顧客と自社、雇用主と従業員、といった双方向の関係を可視化するようなストーリーをオウンドメディア化する企画を練っています。
ここで大事なのが、協力する側にもきちんとインセンティブが働く仕掛けを、企画側で設計しておくことなんです。
例えば、情報メディア掲載によって、「感謝を伝えた側の企業」の情報発信にも貢献できるとか。従業員サイドに、改めて働き甲斐を再確認してもらうための質問を、事前に用意しておくとか。工夫はいくらでもできると思っています。
――素晴らしい取り組みですね!この思いを届けるために、ウェブ解析士の資格は役に立ちますか?
保阪さん:はい。思いや言葉といった定性的な側面だけでなく、しっかりとした理論と根拠をもってプロジェクトを推進できるようになりました。
今、本業と並行して起業準備に取り組んでいます。本当にできるのか不安でしたが、この資格で前向きに考えるだけの根拠とスキルを得られて、非常にありがたく感じています。
――ありがとうございます。最後に、資格取得を検討している方にメッセージをお願いします。
保阪さん:ウェブ解析士は、取得してから始まる資格です。
数ある資格からウェブ解析士を選んだのは、取得した後に始まる資格だと強く伝わってきたからです。何か新しいことを始めたい方には、きっと後押ししてくれる資格だと思いますよ。
あとがき
地方の採用活動では、求職者に企業の存在すら届かないケースも少なくありません。求職者は常に情報にさらされており、発信しても埋もれてしまいます。
地域企業の経営者により深く寄り添いたいという保阪さんの姿勢は、同じく地方でマーケティングに関わる身としても非常に心強く感じました。資格は取得してからが始まりです。ウェブ解析士の学びを活かしましょう!
関連リンク
株式会社クレイプラス:https://www.clayplus.co.jp
保阪哲哉- 上級ウェブ解析士:https://membership.waca.or.jp/profile/wac50009131/
