いろいろ施策はやっているのですが、売上につながっている実感がありません〜ひとりで悩む中小BtoB企業のための Webマーケティングクリニック〜

目次

今回のご相談者

今回のご相談者は、産業機械向けの部品を製造・販売しているBtoB企業のマーケティング担当者です。

従業員数は約80名、年商は約18億円。営業担当者は8名いますが、マーケティング専任者は1名のみ。もともとは既存顧客からの継続受注や、営業担当者による紹介、展示会での名刺交換を中心に新規案件を獲得してきた会社です。

数年前から「Web経由の問い合わせも増やしていこう」という方針になり、リスティング広告、SEO記事、展示会、メルマガなど、少しずつマーケティング施策を増やしてきました。数字だけ見ると、何もしていないわけではありません。むしろ、中小BtoB企業としては、かなり真面目にマーケティングに取り組んでいる会社です。

ただ、担当者の方には、ずっと引っかかっていることがあります。

「いろいろやっているのに、売上につながっている実感がないんです」

今回のご相談

相談者:
広告も出していますし、SEO記事も書いています。展示会にも出ています。メルマガも数千件配信しています。

社内から見ると、「マーケティング活動はそれなりにやっている」ように見えると思います。広告代理店からは毎月レポートも届きますし、Webサイトのアクセス数も確認しています。

ただ、売上につながっている実感があまりありません。

それだけならまだしも、最近は上長からも「結局、どれくらい売上に貢献しているの?」と聞かれるようになりました。広告費や外注費を見直す話も出ていますし、このままだと、マーケティング専任の体制は解消され、私も営業部門に戻ることになりそうです。

正直、いろいろやっているのに評価されないですし、自分でも何を改善すればいいのか分からなくなっています。

加藤先生:
なるほど。まず確認したいのですが、問い合わせは月にどれくらいありますか?

「そもそも問い合わせ自体がない」のか、「問い合わせはあるけれど商談や受注につながっていない」のかで、見るべきポイントが変わります。

相談者:
Webサイトからの問い合わせは、月に10〜12件くらいあります。広告経由の問い合わせも月に数件あります。

なので、問い合わせがまったくないわけではありません。ただ、営業からは「マーケティング経由の問い合わせは、あまり商談にならない」と言われています。

加藤先生:
問い合わせが月10〜12件あるなら、入口が完全に機能していないわけではなさそうですね。

では、その問い合わせのうち、商談につながるのはどれくらいですか?

相談者:
月に3件くらいです。受注まで行くのは、月によって0件のこともありますし、良くても1件あるかどうかです。

うちの商材は検討期間が長いので、問い合わせがあった月にすぐ受注することはあまりありません。見積もり、仕様確認、社内稟議などを経て、数か月後に受注することも多いです。

加藤先生:
そうすると、問い合わせは発生している。ただし、商談化は月3件前後で、受注は月次で見ると0〜1件程度。さらにBtoBなので、受注までの時間差もある。

この状態だと、単純に「問い合わせ数」だけを見ても、売上につながっているかは判断しづらいですね。

もう一つ確認したいのですが、広告、SEO記事、展示会、メルマガ、それぞれの施策がどの商談や受注につながったかは追えていますか?

相談者:
そこが、正直よく分かっていません。

広告代理店のレポートでは、クリック数や問い合わせ件数は確認できます。でも、その問い合わせが営業に渡ったあと、どの会社が商談になったのか、最終的に受注したのかまでは追えていません。

SEO記事も月2本のペースで更新しています。アクセス数も少しずつ伸びています。ただ、それが問い合わせや商談にどれくらい貢献しているのかは分かりません。

展示会も年3回出ています。1回の展示会で100枚以上の名刺が集まることもあります。でも、展示会後は営業担当者に名刺情報を渡して終わりになっていて、その後のフォロー状況までは追いきれていません。

メルマガも配信しています。リストは、展示会で交換した名刺、過去の問い合わせ、既存顧客、休眠顧客などを含めて約3,200件あります。ただ、見ているのは開封率やクリック率くらいです。クリックした人に営業が連絡しているわけでもありません。

加藤先生:
今のお話を聞く限り、問題は「問い合わせや接点がまったくないこと」ではなさそうです。問い合わせはありますし、展示会でも名刺は取れています。メルマガも配信できています。

ただ、それぞれの施策が次の行動につながっていない可能性があります。

広告は問い合わせで止まっている。
SEO記事は閲覧で止まっている。
展示会は名刺獲得で止まっている。
メルマガは開封率やクリック率の確認で止まっている。

この状態だと、施策は動いていても、売上につながっている実感は持ちにくいと思います。

相談者:
たしかに、そう言われると、施策ごとの数字は見ていますが、その後どうなったかまでは見えていません。

ただ最近は、「そもそも施策がまだ足りないのではないか」とも考えていました。競合企業のサイトを見ると、動画、SNS、ホワイトペーパー、ウェビナーなど、自社がまだできていない取り組みが目に入ります。

もっと施策を増やせば、問い合わせも増え、商談も自然に増えるのではないかと。

加藤先生:
その発想になる気持ちは分かります。

ただ、今の状態で先に施策を増やすと、さらに見えにくくなる可能性があります。見るべき数字が増える。管理する施策が増える。営業に渡すリードも増える。でも、どこで止まっているのかが分からないままだと、また「やっているのに売上につながっている実感がない」という状態を繰り返してしまいます。

今回のケースでは、まず新しい施策を増やす前に、今ある施策が商談や受注までどうつながっているのかを整理するところから始めた方がよさそうです。

相談内容の整理

今回の相談で大事なのは、「数字を見ていないこと」ではありません。

広告のクリック数、Webサイトのアクセス数、メルマガの開封率などは、ある程度確認できています。つまり、まったく効果測定をしていないわけではありません。

問題は、その数字が商談や受注までつながって見えていないことです。

問い合わせは何件あったのか。そこから何件が商談になったのか。どの施策から来た問い合わせが、見積もりや受注につながったのか。ここまで見えていないため、「いろいろやっているのに、売上につながっている実感がない」という状態になっています。

この会社では、いくつもの施策が動いています。

リスティング広告は、クリック数や問い合わせ件数だけを見ると、まったく反応がないわけではありません。ただし、その問い合わせが営業側でどう扱われたのかは見えていません。何件が商談になったのか、何件が見積もりまで進んだのか、何件が受注につながったのか。それらが見えていない状態です。

SEO記事も同じです。自然検索からの流入は以前より増えています。しかし、記事を読んだ人が次にどのページへ進んだのか、資料をダウンロードしたのか、問い合わせにつながったのかは十分に確認できていません。記事が「読まれて終わり」になっている可能性があります。

展示会では名刺が集まっています。ただし、名刺交換後のフォロー状況は営業担当者ごとにバラバラです。すぐに商談になりそうな企業には連絡している一方で、「今すぐではなさそう」と判断された企業は、そのままになってしまうことがあります。

メルマガも約3,200件のリストに配信しています。リストの中には、展示会で交換した名刺、過去に問い合わせがあった企業、既存顧客、以前商談したものの受注に至らなかった企業など、さまざまな接点があります。開封率やクリック率は見ていますが、クリックした人に営業が連絡するルールはありません。

つまり、この会社は「何もやっていない会社」ではありません。むしろ、多くの施策を動かしています。

それでも売上につながっている実感がないのは、それぞれの施策が次の行動につながっていないからです。

広告は、問い合わせを生むところで止まっている。
SEO記事は、読まれるところで止まっている。
展示会は、名刺を集めるところで止まっている。
メルマガは、配信してクリックを見るところで止まっている。

一つひとつの施策は動いているのに、商談や受注までの一本の流れとしてはつながっていない。ここに、今回の相談のポイントがあります。

この問題が起きる理由

この問題が起きる理由は、施策ごとの活動量や中間指標は見ているのに、商談や受注までの流れを見ていないからです。

施策ごとの数字を見ること自体は間違っていません。広告のクリック数、SEO記事の流入数、展示会の名刺獲得数、メルマガの開封率やクリック率は、どれも確認すべき大切な数字です。

ただし、それぞれの数字だけを見ると極端に悪いわけではなくても、営業側から見ると「商談が増えた実感がない」となることがあります。

これは、マーケティング施策の数字と、営業活動の数字が別々に管理されているためです。

マーケティング側では、問い合わせ数、アクセス数、開封率、クリック率を見ている。営業側では、商談数、見積もり数、受注確度を見ている。経営者は、最終的に売上や利益につながっているかを見ている。

それぞれの数字を見ること自体は間違っていません。ただし、それらが一本の流れとしてつながっていないと、マーケティング活動全体の評価ができません。

この状態になると、次に出てきやすい発想が「もっと施策を増やした方がいいのではないか」です。

もちろん、新しい施策が必要な場合もあります。しかし、今ある施策の役割やつながりが整理されていないまま施策を増やすと、見るべき数字が増え、管理する施策が増え、営業に渡すリードも増える一方で、どこで詰まっているのかは分からないままです。

売上につながっている実感がないときほど、何か施策を足したくなります。

しかし、本当に必要なのは、施策を増やすことではなく、今ある施策をつなぎ直すことかもしれません。

処方箋(改善策)

今回のケースでまず見るべきなのは、「施策の数」ではありません。いま実施している施策が、商談や受注までの流れとしてつながっているかどうかです。

まず、いま実施している施策をすべて書き出してみましょう。広告、SEO記事、展示会、Webサイト、サービスページ、資料ダウンロード、セミナー、メルマガ、営業資料、営業訪問など、思いつく限り書き出します。

大切なのは、施策そのものだけでなく、その後の動きまで含めて棚卸しすることです。今回の会社であれば、「広告代理店から届くレポート」「SEO記事からサービスページへの導線」「展示会後の名刺管理」「メルマガクリック者への対応」まで書き出すとよいでしょう。

次に、それぞれの施策が何のためにあるのかを一言で書きます。

SEO記事は「見込み顧客に自社を知ってもらうため」。資料ダウンロードは「関心を持った人の情報を取得するため」。展示会は「新しい見込み顧客と直接接点を持つため」。メルマガは「すぐに商談化しない顧客との関係を維持するため」。営業資料は「商談中の顧客に検討材料を渡すため」。

もしここで言葉に詰まる施策があれば、その施策は目的が曖昧になっている可能性があります。「昔からやっているから」「競合もやっているから」「上司に言われたから」という理由だけで続いている施策は、一度見直してみてもよいでしょう。

そのうえで、施策同士のつながりを確認します。

SEO記事を読んだ人は、次にどこへ進めるようになっているでしょうか。問い合わせが入ったら、すぐに営業へ通知されるでしょうか。展示会で名刺交換した人には、会期後に誰が連絡するのでしょうか。メルマガをクリックした人は、営業側で把握できるでしょうか。

今回の会社の場合、特に確認したいのは「マーケティング施策から営業活動への受け渡し」です。問い合わせ、資料ダウンロード、展示会名刺、メルマガクリックなど、見込み顧客の反応は発生しています。ところが、それが営業活動にどう渡され、どうフォローされ、どう商談化しているかが見えていません。

最後に、それぞれの施策がどこで止まっているのかを確認します。

広告であれば、問い合わせは発生しているものの、その後の営業連絡や商談化の状況が見えていません。SEO記事であれば、記事は読まれているものの、サービスページや資料ダウンロードへの導線が弱い可能性があります。展示会であれば、名刺は集まっているものの、会期後のフォローが営業担当者任せになっています。メルマガであれば、開封率やクリック率は見ているものの、クリックした人への次の対応が決まっていません。

このように、施策ごとに「どこまで進んでいて、どこから先が止まっているのか」を確認すると、見直すべきポイントが見えてきます。

詰まっている場所によって、見直すべき施策は変わります。「施策を増やすかどうか」は、その後に判断すれば十分です。

明日からできること

まずは、スプレッドシートでも紙でもよいので、いま実施している施策をすべて書き出してみてください。

そして、横に次の4つの項目を追加します。

「目的」
「見ている数字」
「次につなげる先」
「次に対応する人・部門」

たとえば、SEO記事であれば、目的は「見込み顧客に自社を知ってもらう」。見ている数字は「検索流入数」「記事閲覧数」。次につなげる先は「サービスページ」「資料ダウンロード」。次に対応する人・部門は「マーケティング担当」や「問い合わせが発生した場合の営業担当」です。

展示会であれば、目的は「新しい見込み顧客と直接接点を持つ」。見ている数字は「名刺獲得数」「商談化件数」。次につなげる先は「営業フォロー」「メルマガ配信」。次に対応する人・部門は「営業担当」や「メルマガ配信を担当するマーケティング担当」です。

広告であれば、目的は「今すぐ課題を持って検索している見込み顧客をLPへ誘導する」。見ている数字は「クリック数」「CPA」「問い合わせ件数」。次につなげる先は「営業連絡」「商談」「見積もり」。次に対応する人・部門は「問い合わせを受けて初回連絡する営業担当」や「広告レポートを確認するマーケティング担当」です。

この作業をすると、目的がはっきりしている施策と、なんとなく続けている施策が見えてきます。さらに、「次に誰が動くのか」が曖昧な施策も見えてきます。

最初から完璧に整理する必要はありません。まずは、今ある施策を机の上に並べてみる。そこからで十分です。

※空欄を埋めるだけで、記事で紹介した内容をすぐに試せるサンプルシートを用意しました。

「施策整理シート」は、SEO記事、展示会、広告、メルマガなど、施策ごとに目的や見ている数字、次につなげる先、次に対応する人や部門を整理するためのシートです。まずはこのシートに書き出すことで、今ある施策の役割や、次の行動へのつながりを確認できます。

あわせて、「見込み顧客フォロー管理シート」も入れています。こちらは、問い合わせがあった企業、展示会で名刺交換した企業、メルマガをクリックした企業など、見込み顧客ごとに「次に誰が、何をするのか」のアクションを具体的に整理するためのシートです。

施策全体のつながりを確認したいときは「施策整理シート」、個別の見込み顧客への対応漏れを防ぎたいときは「見込み顧客フォロー管理シート」をご活用ください。

▶︎▶︎ダウンロード:施策整理シート(サンプル)

今回のまとめ

いろいろ施策をやっているのに売上につながっている実感がないとき、問題は「施策が足りないこと」ではなく、「施策同士がつながっていないこと」にある場合が多いです。

問い合わせがまったくないわけではない。アクセス数も少しずつ増えている。展示会で名刺も集まっている。メルマガも配信している。けれど、商談や受注が大きく増えている感じがしない。さらに、どの施策が商談や受注にどうつながっているのかも説明できない。

このような状態では、つい新しい施策を増やしたくなります。しかし、その前に一度立ち止まり、今ある施策を書き出してみてください。そして、それぞれの目的、見ている数字、次につなげる先、次に対応する人・部門を確認してみましょう。

施策を増やす前に、施策をつなぐ。

それが、売上につながるマーケティングを考える第一歩です。

※Webマーケティングクリニックでは、読者のみなさまからのご相談を募集しています。
今後取り上げてほしいテーマがありましたら、お問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。
記事の内容に関するご感想やご意見もお待ちしています。

お問い合わせフォーム:
https://forms.gle/Hce543DsTJ9w1vcSA

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この記事を書いた人

株式会社ピージェーエージェント代表取締役。中央大学理工学部卒業後、NTTドコモビジネス株式会社(旧:NTTコミュニケーションズ株式会社)に入社。IT・WEBを活用したデジタルマーケティングに関する法人企業向けコンサルティング業務に従事。顧客の購買プロセスに基づいたマーケティングシナリオ設計、メールマーケティングを基軸としたCRMコンサルティング等、法人企業の売上向上に寄与するコンサルタントとして活躍。その後、2016年、株式会社ピージェーエージェントを設立、代表取締役に就任。ブランド戦略の立案を強みとして、ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している。

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