— The Art of Japan(SEIBU Fair 2026)海外展開事例
※本記事は、WACAが海外進出サポートのプロフェッショナル企業BRIDGE International Asia Sdn Bhd(ブリッジインターナショナルアジア)との協業において、実際の支援事例をまとめたものです。

日本の伝統工芸や地方の逸品を海外で販売したい。
そう考える事業者は年々増えていますが、「現地での認知ゼロ」からどうやって会場に人を呼ぶのかは、海外イベント集客の大きな壁です。
こんにちは、エスファクトリーのイミトモ(井水朋子)です。
本記事では、マレーシア・クアラルンプールの新商業施設「TRX SEIBU」で開催された日本工芸フェア「The Art of Japan(SEIBU Fair 2026)」において、約5万円(RM1,250)という小予算のSNS広告で来場促進に取り組んだ事例をご紹介します。
限られた予算でも、ターゲットと媒体を絞り込むことで海外イベントの集客は十分に戦える。そのことを示す事例として、海外展開時の参考になれば幸いです。
プロジェクト概要
イベント:The Art of Japan(SEIBU Fair 2026)
The Art of Japan は、Takumi InternationalとSEIBU TRXの共催により、2026年6月19日〜30日の12日間、クアラルンプール「TRX SEIBU」Level 2 Event Hallで開催された日本工芸フェアです(入場無料)。
日本から15社が参加し、約50点の展示に加えて体験型ワークショップも実施。
着物生地で作られたヒジャブ、宇和島のあこや真珠、土佐の手打ち包丁、富山のガラス食器、宇治抹茶、漆器など、「日本のほんもの」を集めたラインナップが特徴です。

注目すべきは、単なる日本物産展ではなく、目玉商品を「着物生地のヒジャブ」においた点です。
日本の伝統素材とマレーシアのムスリムファッションを掛け合わせた、現地にローカライズした商品だったので、このフェアの訴求力を底上げしました。
他にもハラル対応の商品群もあり、現地の富裕層マレー系女性を対象に訴求できる商品を整えていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| フェア名称 | The Art of Japan(主催:Takumi International × SEIBU TRX) |
| 会期 | 2026年6月19日(金)〜6月30日(火) |
| 会場 | TRX SEIBU Level 2 Event Hall(クアラルンプール) |
| 入場 | 無料 |
| 出展規模 | 15社/展示約50点/体験型ワークショップ4種 |
| 体験イベント | 浴衣着付け体験・折り紙教室・カラーコーディネート・耳ジュエリー体験会・フォトイベント(日本の遊び) |
支援パートナー:BRIDGE International Asia Sdn Bhd
BRIDGE International Asia Sdn Bhd(以下、ブリッジ社)は、マレーシアを拠点に日本企業の東南アジア進出をワンストップで支援する総合マーケティング企業です。
本プロジェクトでは、フェアへの来場促進を目的としたSNS広告の企画・運用をブリッジ社と共に行っています。
支援の範囲
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象メディア | Meta(Instagram + Facebook) |
| 支援内容 | SNS広告の企画設計、出稿・運用、クリエイティブ方針、効果測定 |
| 広告予算 | RM1,250(約5万円)/9日間 |
| キャンペーン目的 | フェアへの来場促進(オフライン送客) |
| ランディングページ | フェア特設LP(ワークショップ予約機能つき) |
戦略と施策:小予算だからこその「選択と集中」
1. 媒体はMetaに一本化
昨今の広告アルゴリズムは、AIによる機械学習が多く取り入れられていますが、約5万円という予算を複数媒体に分散させると、十分な機械学習が進まず、かえって効率を損ないます。
そこで本キャンペーンでは、媒体をMeta(Instagram + Facebook)に一本化しました。
Metaを選んだ理由は次の3点です。
- 現地におけるメディア浸透:マレーシアKLでは、富裕層・在留邦人ともに、InstagramとFacebookが広く浸透
- ターゲティング精度:居住エリア・興味関心・言語などでのターゲティングが可能
- ビジュアル適性:視覚訴求力の高い商材との相性が良好
なお、既存のTikTok・Instagramアカウントには同一素材のオーガニック投稿も行いました。
オーガニック投稿と広告、両輪の設計としました。
| Facebook広告 | Instagramリール広告 |
2. 現地富裕層と在留邦人の2つに絞ったターゲティング
今回、限られた予算で集客・購買を最大化するため、現地富裕層と在留邦人に絞って広告掲載を行います。
| ターゲット | 予算配分 | 設計のポイント |
|---|---|---|
| 第1優先:KL在住マレーシア人(富裕層) | RM940(75%) | 英語主軸。富裕層居住区のエリア指定 × 興味関心(ラグジュアリーブランド・訪日旅行など) |
| 第2優先:KL在住の日本人 | RM310(25%) | 言語=日本語 |
ここで海外広告運用ならではのポイントがあります。
まず言語設定については、富裕層は言語を英語(マレー語はサポート程度)にして、効率よくターゲティングをしています。
また、マレーシアのMeta広告では所得による直接のターゲティングができなかったため、「富裕層が住むエリアのピン指定」×「ラグジュアリーブランドや海外旅行といった高単価の興味関心」を掛け合わせて、近似的に富裕層をターゲティングしました。
これらは現地の文化に深い理解のあるブリッジ社の知見によるもので、海外展開においては現地の理解が欠かせません。
最後に、第2ターゲットの在留邦人は母数が小さいため、予算を配分しすぎると同じ人に何度も広告が表示される過剰フリークエンシーが懸念されました。
そこで、フリークエンシーに上限を設定し、あえて予算を抑える設計としました。
3. 訴求軸のローカライズ:「ハラル対応の着物ヒジャブ」を主役に
クリエイティブ戦略では、第1ターゲットである富裕層マレー系の心を動かす訴求として、ハラル対応の着物生地ヒジャブをメインの訴求軸に据えました。
「日本の伝統」をそのまま押し出すのではなく、現地の生活文化と接続した見せ方をすることで、「自分ごと」として受け取ってもらう狙いです。

Kimono Hijab (Takumi International)
4. 広告メッセージとビジュアル
ビジュアルは、リール動画、静止画動画を用意し、それぞれフェア紹介・商品紹介を合わせて配信しました。また、その際3つのフックを含めることで訴求力を高めました。
- 無料体験:入場無料+無料ワークショップ(浴衣着付け・折り紙)による参加ハードルの低さ
- 希少性:マレーシア初登場のプレミアム工芸(土佐の包丁、宇和島あこや真珠など)
- 会期限定:6月19日〜30日という期間限定性による行動喚起
英語コピーはハラル/ファッション主導のA案と、プレミアム工芸主導のB案を用意してA/Bテストを実施。素材面では、イベントチラシをそのまま入稿すると情報過多で視認性が下がるため、キービジュアルをSNS向けの正方形・縦型に再構成しました。
成果:想定を大きく上回る広告効率
配信の結果は、事前想定よりも大きく上回りました。
広告配信のみならず、実際の来場客・売上もともに目標の2倍を達成しました。
| 指標 | 事前想定 | 実績 |
|---|---|---|
| リーチ | 約10,000〜25,000人 | 47,576人 |
| インプレッション | 約28,000〜50,000 | 69,225 |
| CTR | 1.0〜2.0% | 3.48% |
| CPM | RM25〜45 | RM5.44 |
| リンククリック | 約300〜900 | 1,685 |
| LPビュー | 約270〜800 | 1,242 |
| 消化金額 | RM1,250 | RM376.68 |
特筆すべきはCTR 3.48%という数値です。
業界平均を大きく上回り、クリエイティブとターゲット層の親和性が極めて高かったことを示しています。
またCPMも想定(RM25〜45)に対して実績RM5.44と、想定の5分の1以下のコストでインプレッションを獲得できました。
結果として、当初想定していた予算を大きく下回る消化額で、想定上限の約2倍のリーチを実現できました。
オーディエンス別にみるCTRの傾向
年齢・性別の内訳を見ると、興味深い傾向が表れました。
「購買力の高い、日本の本物志向に響く層」を狙ったターゲティング設計が、データの上でも裏づけられた形です。
| 年齢層 | 45-54歳 | 55-64歳 | 25-34歳 |
| CTR | 4.13% | 4.16% | 3.07% |
※ボリュームゾーンは25-34歳
プラットフォーム別ではInstagramがCTR 3.56%と最も高く、ビジュアル重視のクリエイティブ戦略がInstagramユーザーに強く訴求したと考えられます。
| プラットフィーム | ||
| CTR | 3.56% | 3.40% |
イベント現地からの声
売上は過去最高の売上になり、想定の2倍を達成する反響となりました。
小物やアクセサリ、ヒジャブ製品はマレー系に好まれる傾向があり、想定通りでしたが、高単価で特別感のある食器は中華系に好まれる傾向があったようです。

着付け体験、折り紙教室に多くの人が集まりました。
今回のフェアで得られた情報として、今後のマーケティング活動の参考にしていければと思います。
海外展開で得られた学び
本事例から得られる学びは多々ありましたが、5点を紹介します。
- 小予算の中、フェアとSNS広告の掛け合わせ
SEIBU百貨店という立地でありながら固定費のかからないイベントフェア形式、SNS広告では約5万円の予算で4.7万人にリーチ。海外市場の反応を見極める場として、コスパの高い掛け合わせでした。 - 現地文化を理解した上でのターゲティング
地域によってはターゲティングメニューが異なるのがSNS広告の注意したいところです。今回は現地ブリッジ社の知見を活かし【富裕層居住エリア×高単価興味関心】の掛け合わせたターゲティングができました。 - 日本の伝統工芸品を現地の文脈で
「着物生地のヒジャブ」「ハラル対応」など、現地文化に歩み寄りユニークな強みを生み出した商品があってこその、今回のイベントフェアは大盛況につながりました。 - 重要な顧客層の特定
本件では45歳以上のCTRが4%を超えることがわかり、重要な顧客層のセグメントを特定できました。次回以降、同じようなイベントを開催する際のヒントにしたいところです。 - 中華系という新たなニーズの発見
イベント現地から、特別感のある食器は中華系に好まれたというフィードバックがありました。今回はマレー系富裕層に向けたイベントフェアでしたが、中華系という新たなニーズという点では収穫があったと思います。
まとめと今後の展望
The Art of Japanの事例は、「小予算×短期間×海外」という制約の多い条件下でしたが、SNS広告が十分に機能しました。
現地ユーザーのメディア活用状況を踏まえ戦略的にターゲットを絞り込んだこと、現地文化にローカライズした目玉商品とビジュアルを用意できたことなどが、本プロジェクトにおいて特筆すべき成功要因だと考えられます。
今後は、今回の配信で得られた「45歳以上の女性層の高い反応」というデータを活かした専用クリエイティブの制作や、リール・ストーリーズ向け縦型動画の拡充、リターゲティングを組み込んだ会期前からの配信設計など、次回フェアに向けたさらなる改善が期待されます。
WACAでは、ブリッジインターナショナルアジアとの協業を通じて、ウェブ解析士の知見を活かした海外展開支援を推進しています。海外市場でのデジタルマーケティングにご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
