
執筆:中野 彩子(上級ウェブ解析士/編集者) 編集:ふじね まゆこ(ウェブ解析士)
プレスリリースを活用する企業・団体・個人が激増する昨今、大手PRプラットフォームでPV1位、転載120媒体を実現したプレスリリース配信の実践内容をご紹介します。
PR TIMES内で約2万PV、転載120媒体を達成
登録者数151万人(2026年1月)のYouTube人気番組『令和の虎CHANNEL』をご存じでしょうか。プレゼンをして認められれば「虎」から出資してもらえるリアリティ番組です。元・虎の一人、井口智明氏が社長を務めるディアローグホールディングス傘下に、株式会社ディアローグコスメティクスがあります。東京・神奈川に展開する美容院で主に用いるヘアケア商品を製造・販売する企業です。
上級ウェブ解析士の柳澤みゆきさんが美容院に通っていた縁から始まり、同社と医療機器商社の中日本メディカルリンク株式会社によるエシカルプロジェクトの広報を私が担当。柳澤さんの設計のもと、PRの成果最大化を目指しました。

当プロジェクトには、異業種の連携という難しさに加え、各社の広報活動(ウェブサイト、SNS、動画、印刷物)が分散しており、連携と数値分析に課題がありました。
課題
自社サイトをコストで終わらせないために 事例集62 柳澤みゆき 【令和の虎社長と仕事した件-1】虎の威を借るブランディング 「エシカル商品で東京と地方の企業をつなげた話」より抜粋
- SNSをやっているが情報が連携していない
- ウェブサイトとSNS、動画の担当者がバラバラに動いている
- 印刷物とも連携していない
2カ月の取材、編集を経て、2カ月で2社 計5本のプレスリリースを配信しました。
結果、PR TIMESで一時PV1位、約2万PVを獲得し、120の媒体に転載されました。
プレスリリースでよく使われるKPI、広告費換算額は以下のとおりです。
| プレスリリース数 | 広告換算額 | |
|---|---|---|
| ディアローグコスメティクス | 2件 | 295万円 |
| 中日本メディカルリンク | 3件 | 186万円 |
広告費換算額とは、プレスリリースした情報がメディアに露出した際、同じ分量を広告として出稿した場合、いくらかかるかを算出した金額です。媒体が設定している広告費をもとに算出します。
具体的な金額を示すことは、プレスリリースの価値や広報活動の成果報告で役立ちます。
選ばれるリリースは「取り上げない理由」がない
プレスリリースを選ぶメディア側の立場で考えると、日々、何百件も発表されるリリースのなかから、効率的に情報を選び取らなければなりません。最低限の基準を満たしていないリリースは無視されるのが現状です。

記者、編集者として情報を選別してきた私の経験から、本事例でも意識した情報選出の判断基準をまとめました。
- 1.怪しい目的を持っていないか
-
プレスリリースが容易になり、個人や団体、詐欺まがいの事業を行っている企業でも発信しています。少しでも信用できない点があれば取り上げません。
- 2.他社との類似事例がないか
-
過去に似たような事例を取り上げていた場合、ニュース性(新規性)が薄れます。特別な事情がない限り取り上げません。
- 3.広告と広報の区別がついているか
-
単なる宣伝は広告として出稿してもらいたいのがメディアの本音です。
引用:自社サイトをコストで終わらせないために 事例集62 中野 彩子 氏 2.0 「【令和の虎社長と仕事した件-2】虎に翼を与えるニュースリリース 大手PRプラットフォームでPV1位になった話」より一部編集して抜粋
これらの基準に加え、テンプレートや生成AIで出力された「それらしい文章」は無視されます。多くのプレスリリースから選ばれるために、最低限押さえておきたいところです。
成果を掴むプレスリリース。実現のポイント
虚偽や誇張のない物語(ストーリー)ができたら、次は届けたい人へ伝えるための情報設計が重要です。ポイントを3つお伝えします。
【ポイント1】基本情報を必ず掲載する
プレスリリースサービスには、あなたの企業、サービス、商品を知りたい人が検索する手がかりが欠かせません。
自社の情報(ウェブサイト、SNS、YouTubeアカウントなど)にたどり着くための情報は必ず含めましょう。
- 創業者・沿革
- 所在地
- 事業内容
- 消費者からの評価
- (あれば)メディア露出履歴
加えて、自社ウェブサイトにもこれらの情報を詳しく載せます。興味を持ったユーザーがせっかくアクセスしたのに、自社ウェブサイトにプレスリリースと関係のない情報ばかり載っていたら台無しです。
プレスリリースは、記事を見た人の視点で接点設計すべきです。
【ポイント2】タイトルは「知名度」と「意外性」をかけ合わせる
本プロジェクトでは、知名度の高いグループ企業を持つディアローグコスメティクスと、創業100年を超える老舗企業の中日本メディカルリンクの特徴をそれぞれ前面に出し、表現とタイミングに工夫を凝らしました。
ディアローグコスメティクスは、自社サイトで新商品開発の経緯や髪のお手入れ方法などをかなり詳しく発信しています。さらに、グループ企業社長である井口氏は個人のYouTubeチャンネルでもフォロワーが約7.3万人(2026年1月)と著名です。
凄腕経営者として知られる人物が、地域の障害者雇用や水源の保全といったSDGsの取り組みに熱心であることは社会性や意外性に満ち、注目されると確信。彼の名前や経歴と今回の商品ができるまでをストーリーにまとめることにしました。
中日本メディカルリンクは、創業者の理念・創業のきっかけそのものが、ディアローグコスメティクスの商品販売に携わる起源にあたります。商品販売にあたり会社の定款を改訂するという大きな決断も行われました。
【ポイント3】プレスリリース閲覧者との接点設計にこだわる
ウェブ上にある無数の情報のなかから、プレスリリース1つだけで注目を集める(≒バズる)のは稀です。

本事例では、2社それぞれの強みを生かし、計5本のリリースを段階的に配信。1本で完結させず、関心を高めるストーリー構成にしました。
以下、発信内容の時系列です。プレスリリースサービスの利用は通常、1カ月以内の新情報の発信に限られます。ディアローグコスメティクスの商品はすでに発売を開始していたため最も早く配信しました。狙いとしては最後に配信する開発ストーリーを最も多くの人に読んでもらい、興味を持ったユーザーが検索でほかのプレスリリースにたどり着く動線でした。
- ディアローグコスメティクス、新しい香りの「幾重」発売 (2024年9月)
- 「幾重」販売で両社が連携(2024年9、10月) ※2社それぞれ配信(PR TIMES / アットプレス)
- 中日本メディカルリンク、社内でエシカルプロジェクト発足 (2024年11月)
- ディアローグコスメティクス、幾重開発ストーリー (2024年11月)
引用:自社サイトをコストで終わらせないために 事例集62 中野 彩子 氏 2.0 「【令和の虎社長と仕事した件-2】虎に翼を与えるニュースリリース 大手PRプラットフォームでPV1位になった話」」より一部編集して抜粋
加えて、柳澤さんによるリレーション設計が功を奏し、社会貢献性の高い本事例がニュースや各種プラットフォームで取り上げられる結果になりました。


お客様の反響
本事例の記事化にあたり、ご支援した2社へプレスリリースによる変化・反響の言葉をいただきました。
中日本メディカルリンク株式会社は、創業以来の社是「奉仕」の精神を受け継ぎ、医療・福祉分野で培った販売体制を生かして、作り手と消費者をつなぐ架け橋となり、地域活性化と持続可能な未来の実現を目指しています。
社会の重大なインフラである医療を支える企業の一員ではあるものの、表舞台に出ることはないため家族や知人にどんな会社か、何の仕事を自分がしているかを説明するのはなかなか難しいのが実情です。
今回のプロジェクトメンバーとなり、「幾重」製造に携わる方々や木曽駒ケ岳の水源、中日本メディカルリンクが果たす役割について初めて家族に話しました。
ヘアケア商品そのものの良さだけでなく、プロジェクトの持つ社会的な意味などに共感をもってもらうことができました。「エシカル消費」をもっと多くの人に知ってもらえるよう、プロジェクトに取り組んでいます。
株式会社ディアローグコスメティクスでは、エシカルシャンプー「幾重」の製造において、地域の雇用を最大化するため、できる限り人の手が関わる工程を大切にしています。
大きな機械を入れていないため製造数にも限界がありましたが、販売に賛同してくださる企業も増え、2024年に第2工場を新設しました。
これにより、障がいのある方を含む地域の働き手がより多くの工程に携わることが可能になり、地域全体の雇用循環が生まれています。
ノンプロジェクトを通じて、地域の病院祭への出店、大型病院の売店へも働きかけ、医療従事者のみなさまが手に取ってくださる機会を増やしてまいります。
弊社のヘアケア商品で髪や頭皮の状態が良くなり、より豊かな毎日を過ごす方がさらに増えればこの上ない喜びです。
まとめ:プレスリリースの仕組みと時流を掴んで、成果につながる発信を。
たった1回のプレスリリースでは、宇宙に星屑をひとつ放ったようなものです。
加えて、たとえ大手プラットフォームでPV1位を獲得しても、広報活動自体が終わってしまっては忘れられてしまいます。
一度きりのリリースで終わらせずに、自社ならではのストーリーを戦略的に発信し続けましょう。
書籍では、メディアが取り上げやすい情報選択の方法や第三者視点の取り入れ方なども紹介しています。詳細は書籍でご確認ください。
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自社サイトをコストで終わらせないために 事例集62

