ダブルライセンスに、国家資格ではなく上級ウェブ解析士を目指した理由

中小企業診断士に何を足せば、自分を選んでもらえるようになるのか。私がこの問いの答えに「マーケティング」を見出したのは、診断士に合格して間もなくの頃でした。本記事では、そこから上級ウェブ解析士認定講座の受講に至るまでの道のりをお伝えします。

目次

マーケティングへの関心を高めた最初の動機とは

私のキャリアはITエンジニアリングから始まり、当初は業務系システム開発に従事しました。その後、研究機関に移り、流体解析の研究室に19年常駐しました。高度な業務でしたが、契約は1年ごとで、いつ仕事がなくなってもおかしくありません。その備えの一つとして資格の勉強を開始。2002年度に中小企業診断士の試験に合格しました。

診断士の勉強で経営の全体像を学んだ結果、マーケティングが自分事に思えました。長期間研究室に引きこもっていた私は、営業の経験もセンスもありません。それでも私のスキルを商品として買ってもらうために、何ができるか。思い当たったのがマーケティングでした。マーケティングへの関心を高めた最初の動機は、私自身が仕事を得て食べていくためだったのです。

やがて、せっかく自分のためにマーケティングを学ぶのだから、これを自分の商品にしようと考え始めます。読者の皆さまには釈迦に説法ですが、「T字型人材」という考え方があります。T字の縦棒は深く掘った専門、横棒は幅広い知識です。経営全体を広く見る中小企業診断士は、まさに横棒です。その横棒の下に、自分のIT知識も活かせるデジタルマーケティングという縦棒を持とうと考えるようになりました。しかし具体的にここを目指すのは、まだ先の話になります。

枠を取り払うと、デジタルマーケティングの資格があった

私が見聞きした範囲では、診断士のダブルライセンスとしてよく勧められるのは、社会保険労務士、税理士、行政書士です。どれも独占業務がある国家資格なので、独占業務がない診断士が志向するのは理にかなっています。

しかし、仮にデジタルマーケティングに特化した国家資格があったとしたら、たとえ独占業務がなかったとしても、診断士の間で人気が出るのではないでしょうか。診断士はマーケティングの重要性を理解していますし、デジタルマーケティングの重要性は時代と共に高まっているからです。

ただ、国家資格と民間資格の枠を取り払ってみると、ウェブ解析士というデジタルマーケティングの資格がありました。私もSEOを調べるうちに、ウェブ解析士の存在を知っていました。ところが、私はこの資格の名称から、デジタルマーケティングを連想することができずにいました。もっと狭い領域の資格だと思っていました。

無料体験セミナーで、ウェブ解析士の印象が変わった

そうは言っても、ウェブ解析士は気になる資格だったので、無料体験セミナーに参加してみました。これはデジタルマーケティングの資格だ。ウェブ解析士への印象が一新されました。

中小企業診断士試験も、今では出題範囲にデジタルマーケティングが含まれています。しかしウェブ解析士は、デジタルマーケティングに特化している分、実務レベルまで深く学びます。顧客行動をWeb上でどう計測し、どの指標に落とし、どう改善するかを、実際の手順まで扱います。公式テキストは毎年改訂されていて(2026年版で第17版)、アカデミックな内容だけでなく、実務の最前線の知見も取り込まれやすいと私は感じています。

出典:一般社団法人中小企業診断協会「令和7年度 中小企業診断士 第1次試験案内」企業経営理論の科目内容(マーケティング論:デジタル・マーケティングの概念、デジタル・マーケティングの実行)

公式テキストを試し読み(PDF)できます。
→ウェブ解析士の資格ページで、公式テキストの試し読みを見る

2015年に仕事を失い、2021年にウェブ解析士を取った

もっとも、当時は流体解析の分野で生きていく道も探っていたため、ウェブ解析士の講座は受講しませんでした。

契約の不安は、2015年3月、46歳のときに現実になりました。契約が終わり、研究機関での私の仕事がなくなったのです。

その後しばらくは、個人で流体解析の仕事を請けていましたが、やがてこの分野からの撤退を決断。ITとデジタルマーケティングの橋渡し役としての仕事を模索し始めました。2019年からは、まだマーケティング領域ではありませんでしたが、初めてビッグデータを分析する案件に入り、その間にウェブ解析士の資格を取りました。この資格を持って、マーケティングに関われる仕事を探し始めました。

資格で転職の扉が開き、上級が視野に入った

資格は、確かに扉を開けてくれました。声をかけてくれたのは、マーケティング分析システムの案件を持つIT企業でした。入社は2022年10月、53歳のときです。マーケティング関連の案件に入れたのは、これが初めてでした。

ただ、IT企業なので当然ではありますが、私の担当はシステム開発でした。ビッグデータを管理し、解析ツールを導入し、ダッシュボードを開発するところまで担いました。データを分析して改善につなげるのは、私ではなくクライアント側の仕事でした。

私は会社員としてITの仕事をするかたわら、個人事業として中小企業診断士の仕事も単発で請けています。けれども、私の2つの仕事には共通点がなく、性質の異なる仕事を別々に請けていました。そこで私は、マーケティング関連の仕事も上流から下流まで請けられるように、上級ウェブ解析士を視野に入れるようになります。

2025年、自分のサイトという実践の場をつくった

それらの仕事を続けているうちに、私は個人開発アプリのアイデアを思いつきました。これを開発して収益化したいと考え、その売り場として、アプリより先にサイトを立ち上げました。ドメインを育てるには時間がかかるので、売り場を先に育てようと考えたのです(アプリは現在開発中です)。

実際、時間はかかりました。Google Search Consoleで見ると、公開から4か月ほどたった2025年6月でも、検索からのクリック数は月101回でした。それが11月には月384回、約3.8倍になりました。

出典:筆者が運営するサイトのGoogle Search Console(2025年6月・11月の月間値)

小さなサイトですが、会社では得られなかったウェブ解析の実践の場を、ようやく手に入れました。もっとも、売上そのものは、まだ動いていません。

まず、GA4(Googleアナリティクス4)でどのページがよく読まれているかを、Search Consoleでどんな検索キーワードで訪れているかを見ました。読まれるテーマが分かれば、次に何を書くかというコンテンツの戦略が立てられます。次に、時間による変化。アクセスは土日と月曜に多く、夏には季節要因で大きく減りました。さらに、どの端末で見られているか。スマートフォンが約4分の3でした。そして、どこから見られているか。地元とその周辺からが多いものの、遠方や海外からのアクセスもありました。

出典:筆者が運営するサイトのGoogleアナリティクス4(曜日・季節の傾向は2025年3月~2026年8月、端末の割合は2025年2月~2026年9月22日)

一つひとつは基本的な切り口です。それでも、自分のサイトの数字として見ると、読者の姿が具体的に浮かんできます。この読者のために次は何をするか。数字から打ち手を考える感覚を、ここで初めて実感しました。

2026年には、スキルアップのために、協会のGA4講座とGTM(Googleタグマネージャー)講座も受講しました。そして同じ年、私は上級ウェブ解析士の講座に申し込みました。

2026年、上級の講座で、一気通貫の仕事の形が見えた

私が受けている上級の講座(2027年度カリキュラムのプレ講座)には、ある事業を題材に、分析からロジックツリーの組み立てまで取り組む課題があります。課題に取り組んでいるうちに、診断士の仕事と、ウェブ解析と、ITの3つが一本の線でつながる形が見えてきました。

図1:同じ一本のロジックツリーを、上から下までたどる

※ 問い合わせから契約に進む事業(BtoBやサービス業など)の例です。

ツリーの上方で売上を分解していくのは、診断士が日常的に扱っている領域です。事業全体を見て、強みと弱みを整理し、どこに手を打つべきかを考える。講座の課題でも、このあたりは診断士の経験がそのまま生きました。

ところが、ツリーを下へたどってWebの問い合わせまで来ると、景色が変わります。サイトへの流入数、コンバージョン率、流入経路ごとの内訳。どの数字を、どの道具で、どう定義して測るのか。ここから先のウェブ解析が、私がダブルライセンスとして足したい部分です。

そして、ツリーを支える土台には、ビッグデータ基盤、データ収集、ダッシュボードなどがあります。私の場合、ここはIT企業の業務で作ってきたものでした。

最初に書いたT字型人材に重ねてみると、もっとはっきりします。

図2:図1をT字で見る

協会は、2027年度から上級ウェブ解析士に求める力の一つを、次のように示しています。私がやりたいことと重なっています。

KPI設計:事業目標から逆算して、追うべき数値を正しく設定する

(出典:一般社団法人ウェブ解析士協会「2027年度資格制度・価格改定のお知らせ」2026年6月30日 https://www.waca.or.jp/news/95299/ )

もちろん、診断士の立場では、ウェブの分析をその道の専門家と組んで進めるのも、有力な選択肢です。一方で、一人でツリーの上から下まで通すやり方があっても良いと思います。クライアントにとっては窓口が一つで済みます。そして私が何より大事だと思うのは、自分が責任を持てる範囲が広がることです。

生成AIが広まり、調べる、まとめる、書くといった作業の多くを、AIが担えるようになりました。AIに仕事が侵食されていくなかで、人間に残る大事な役割は、結果に責任を持つことだと私は考えています。自分の責任の範囲を広げることが、AIによる侵食に抗う大切な戦略になります。

いま振り返って感じる、民間資格の良さ

私が選んだ上級ウェブ解析士は、民間資格です。国家資格と民間資格の両方を持つ私から見て、民間資格には民間資格の良さがあると感じています。

国家資格は、ブランド価値が信頼の土台になります。民間資格は、機動力と柔軟性が魅力です。上級ウェブ解析士の講座では、課題に生成AIを使うことが推奨されています。私もAIと一緒に課題に取り組み、どこをAIに任せ、どこを自分で確かめて直したかを記録しながら進めています。試験の公平性を第一に守る国家資格では、なかなか真似できないことです。

これから上級を目指す診断士の方へ

最後に、これから上級ウェブ解析士を目指す診断士の方に、私の経験からお伝えしたいことがあります。

上級の講座では、実務の経験がものを言う場面が多いと感じています。そして実務の機会は、人によっては待つより自分でつくるほうが早い。私は、自分のサイトを運営してそれに気づきました。

診断士の方なら、自分のサイトを立ち上げて、経営に関する記事を書くことができます。たとえば、顧問契約の数=問い合わせ数×成約率、問い合わせ数=サイトへの流入数×問い合わせ率(コンバージョン率)と、自分の事業でツリーを置いてみる。そのうえで、どの数字を追い、何を直すかを自分で決める。そこで回した経験は、振り返って語れる実務の最初の一歩になります。そして、そのサイトは、自分自身を選んでもらうための場所にもなります。

上級ウェブ解析士に進むには、まずウェブ解析士の資格が必要です。上級を目指すかどうかにかかわらず、ここが入り口です。ウェブ解析士で何を学ぶのかは、ウェブ解析士の資格ページ(講座の内容と公式テキストの試し読み)で確かめられます。

本記事の事例とデータは、筆者自身の経歴と、筆者が運営するサイトのものです。勤務先での業務は、企業・案件・取引先が特定されないよう一般化して記載しています。掲載については、いずれも筆者自身が承認しています。

この記事を書いた人

金田誠(かねだまこと)

ウェブ解析士・中小企業診断士/岐阜県

ITエンジニアとしてキャリアを始め、研究機関で流体解析に19年従事。現在はIT企業のデータエンジニアとして、マーケティング分析システムの開発・運用を担当し、同時に個人事業として中小企業診断士の活動を行っている。登山関連アプリの収益化を見据えて、登山の情報サイトを運営。上級ウェブ解析士の講座を受講中。

サイト:https://www.hatofuki.com/

デジタルマーケティングを基礎から総合的に学ぶには

Google アナリティクスをはじめとしたGoogle系のツールは、その使い方を知ることも大切ですが、使うための戦略や設計が必要です。それは、ビジネスに成果をもたらすために必須の考え方です。

ウェブ解析士協会では、このようなデジタルマーケティングの基盤となる「ウェブ解析」を体系的に学べる環境と、知識・技術・技能に一定の評価基準を設け、あらゆるデータから事業の成果に貢献する人材を育成しています。

ウェブ解析士ナレッジ

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