
こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。
企業がマーケティング活動を推進する上での成功の鍵は、戦略やマーケティングツールの優秀さだけではありません。それらを動かす「人」、そして「チームの体制」こそが、成果を大きく左右します。特にリソースが限られた中小ベンチャー企業などにおいては、少ない人数でどうパフォーマンスを最大化するかが課題になります。
弊社でも、数多くの企業様から「社内でマーケティングチームを作りたいのだが、どう作っていけば良いか?」「マーケティング部の業務がなかなかうまく回っていない」というご相談を頂戴します。それらのお悩みの背景には、役割の曖昧さ、過剰な属人化、機能分担の不在など、チーム体制の問題が隠れていることが少なくありません。 この記事では、小規模なチームでも高い成果を出すためのマーケティングチームの役割設計・採用・育成のヒントをお伝えします。少人数でも成果を上げるには、効率的な役割分担と柔軟な体制構築が不可欠です。この記事を通して、自社のマーケティングチームの体制を見直すきっかけにしてみてください。
なぜ多くのマーケティングチームが機能しないのか?
まず前提として、多くの中小ベンチャー企業においてはマーケティング部門の人員が「少数精鋭」で構成されていることが多いです。あるいは営業部門と兼務だったり、実質的には一人マーケ部門というケースもあるでしょう。こうした状況下でよく見られる問題には、以下のようなものがあります。
戦略だけが先行し、実行が回らない
経営者や外部のコンサルタントが主導する形でマーケティング戦略が立案されるケースがあります。しかし、実際に実行する人材や体制が社内で整っていないため、計画倒れに終わることが少なくありません。特にリソースが限られている中小ベンチャー企業では、戦略と実行を切り離して考えること自体が現実的ではありません。机上の空論ではなく、現実的な実行面までしっかり考慮をした上で戦略を立てることが大切です。
業務が属人化しすぎる
担当者にすべてを任せっきりにしてしまうと、その人が離職したり多忙になった際に業務が滞ってしまいます。また、知見が共有されず、同じ失敗を繰り返してしまう原因にもなります。属人化の怖さは、一時的にはうまく回っているように見えても、長期的には組織の脆弱性を高めてしまう点にあります。担当者が日々行っている業務をブラックボックスにせず見える化し、他のメンバーに引き継いだとしても回るような体制を意識するようにしましょう。
分析や改善が後回しにされる
マーケティングは常に仮説と検証の繰り返しです。しかし、日々の業務に追われて分析や振り返りの時間が取れないと、施策の精度は上がりません。数字に基づいた判断ができず、経験や感覚だけで物事を進めるようになってしまうと、再現性が失われます。「施策の成功・失敗の最終判断は、結局は経営者の感覚で決めている」というような事態に陥ることも少なくありません。各種データや数値を追いかけながら、論理的に判断、意思決定ができるような仕組みを作るようにしましょう。
成果につながるマーケティングチームの役割設計とは?
前述のような問題の原因としては、「役割設計の不在」や「現実を見ない理想論的なチーム構成」が挙げられます。では、限られた人数でも成果を出すマーケティングチームとは、どのように設計すればよいのでしょうか?重要なのは、業務の種類に応じて必要な機能を定義し、それぞれに責任を持たせることです。
基本の3機能を押さえる
マーケティングチームには、大きく分けると以下の3つの役割が必要です。
- 戦略設計(誰に、何を、どのように届けるかを考える)
- 実行・運用(コンテンツ制作、広告運用、SNS更新など)
- 分析・改善(データ収集、効果測定、PDCA)
これらの役割をしっかりと明確にすることで、業務の優先順位が整理され、誰が何を担当するのかを考えられるようになります。
社内外のリソースを使い分ける
すべてを社内メンバーで内製化するのは、中小ベンチャー企業ではあまり現実的ではありません。外部の専門家やパートナーを活用することが重要です。たとえば、広告運用やSEO対策など、専門性の高い領域は外注し、戦略立案やKPI管理は社内で行うというような、最適な体制を構築していきましょう。
明文化と共有を徹底する
役割の定義が曖昧だと、「各々が同じ業務を重複して行なっていた」「自分の責任範囲ではないと思ってやっていなかった」など、無駄な手戻りや責任のなすりつけ合いが発生します。業務フローや担当範囲は明文化し、社内外に関わらず常に共有・アップデートしておくことが求められます。小規模なチームだからこそ、情報の明確性・透明性がとても重要になります。
即戦力より「伸びる人材」を見極めて採用する
マーケティング人材の採用は、特に中小ベンチャー企業にとって大きなハードルです。大企業のように豊富な予算や知名度を活かして優秀な人材を引き寄せることが難しい場合、企業の「育てる力」が問われます。
マーケターには、専門的なスキル以上に「考える力」「変化に対応する力」が求められます。特に次のような資質がある人は、未経験でも伸びる可能性が高いと言えます。
- 本質を考える力(なぜ?と問い続けられる)
- 仮説思考と検証力
- 数字に対するアレルギーがない
- お客様思考でコンテンツをつくれる
これらを採用面接で完璧に見極めるのは当然難しいとは思いますが、具体的な資格やスキル面ばかりを重視するのではなく、「自分なりの仮説を立てて動いた経験があるか」などを聞きながら、上記の資質を確かめることをおすすめします。
現場で育つ仕組みをどうつくるか
採用した人材を育てるには、育成の仕組みが欠かせません。とはいえ、研修に時間やコストをかけるのが難しいことも多いでしょう。そこで重要になるのが、「日常の業務の中で育つ仕組み」をどう設計するかです。
戦略的に日々の業務を仕組み化する
- 業務ごとに「チェックリスト」「簡易マニュアル」を整備しておく
- 上司との週次1on1で、疑問点や改善点をすり合わせる習慣を作る
- トライアル&エラーの場を意図的につくる(小さな施策から任せる)
これにより、採用したばかりの新人の「なんとなくやっている」感が無くなり、「なぜそうするのか」という思考を伴った行動に変わっていきやすくなります。
ナレッジを共有する場を作る
- マーケティングの成功/失敗事例を上司や経営層に共有する場をつくる
- NotionやGoogleドキュメントなど、ナレッジをアップして共有できる仕組みを整える
人の成長は「教わること」だけでなく、「自分の学び・経験・知見を整理し伝えること」によっても深まります。アウトプットの機会を意図的に設計することが、結果的に全体のレベルアップにつながります。
フェーズに応じたチーム体制の変化
マーケティングチームは、組織の成長や事業のフェーズに応じて柔軟に変化していく必要があります。はじめは数人の少人数で担っていた業務も、数年後にはチームで分担する必要が出てくることが大半です。たとえば以下のように、それぞれのフェーズに応じて、チームの体制を変化させていくことも求められます。
- 立ち上げ期:実行型人材+外部支援。外部の力を借りながら、スピードと柔軟性を重視
- 拡大期:役割の専門化。戦略/実行/分析を分担できるような体制へ
- 安定期:再現性のある仕組み化と、育成できる中間層(管理者)の育成
リソースが限られる中小ベンチャー企業においては、「外部の力を上手に借りること」が有用です。立ち上げ期に支援を依頼することはもちろん、拡大期・安定期においても、外部コンサルや信頼できるパートナーに伴走をしてもらうことで、内向きになりがちなチーム運営に新しい気づきが生まれます。
さいごに
マーケティングは、「誰がやるか」で大きく成果が変わる分野です。そして、その人の力を最大限に発揮できるかどうかは、「どのような体制で支えているか」によって決まります。
まずは、自社のマーケティングに必要な基本機能を洗い出し、それぞれの役割と責任を明確にすること。次に、組織に合った人材を採用し、現場で育てる仕組みをつくること。そして定期的に体制を見直し、成長に合わせたアップデートを続けていくこと。
こうした地道な積み重ねが、やがて競合との差を生み出し、強いマーケティング組織を育てていくのです。
マーケティングチームに正解の形はありません。しかし、常に「今の事業フェーズに最適か」という問いを持ち続けることが、成長し続ける組織の条件です。この記事が、その一助となりましたら幸いです。