
こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。
「CVボタンは、とにかく目立たせればいい」
赤くする、サイズを大きくする、アニメーションを付ける。Webサイトの改善を検討する際、多くの企業でまず話題に上がるのが、こうした「ボタンの見た目」ではないでしょうか。実際、色や形を変えるだけで数値が動くケースもあり、「やはりデザインが重要だ」という認識は間違ってはいません。
しかし一方で、「色を変えたのに思ったほどCVが伸びない」「一時的に上がったが、すぐに頭打ちになった」といった声も少なくありません。それは、CVボタンを「目立たせる対象」としてしか捉えていないことが原因かもしれません。
そもそもユーザーは、なぜCVボタンを押すのでしょうか。それは色に反応しているからでしょうか。それとも、「ここまで読んで、この内容なら次に進んでもいい」と心理的に納得した結果でしょうか。多くの場合、答えは後者なはずです。CVボタンは、ユーザーの行動を強制するスイッチではなく、理解と納得の延長線上にある「次に進むための合意点」なのです。
本記事では、「赤や緑にすればいい」「目立たせればいい」といった単純な話から一歩踏み込み、ユーザーの心理や行動導線を踏まえたCV設計についてお話しいたします。デザインを部分的な改善で終わらせず、マーケティング戦略全体の中でどう位置づけるべきかについて、解説をいたします。
なぜ「CVボタンの色」ばかりが議論されるのか
弊社のクライアント企業様において、WebサイトのCV改善を検討するとき、多くの現場で真っ先に話題に上がるのが「ボタンの色」です。赤がいいのか、緑がいいのか、いや最近は青が主流らしい。では、なぜこれほどまでに「色」に注目が集まるのでしょうか。
理由の一つは、「変えやすさ」にあります。ボタンの色は、サイト全体の構造やコンテンツを見直す必要がなく、デザイン修正だけで対応できます。制作会社やデザイナーにとっても工数が少なく、マーケティング担当者としても「すぐに手を打った感」を出しやすい施策です。そのため、改善アクションとして最初に選ばれがちになります。
もう一つの理由は、「成功事例」が分かりやすい形で共有されやすい点です。「ボタンを赤にしたらCVが○%改善した」といった話はインパクトがあり、社内説明や上長への報告にも使いやすい。一方で、その背景にある商材、ターゲット、導線設計の違いは報告から省略されがちです。そして結果だけが独り歩きし、「色を変えれば成果が出る」という誤解が強化されていきます。
さらに、CVという成果が数字で可視化されることも影響しています。数字が動くと、原因を単一の要素に求めたくなるのが人の心理です。しかし実際には、ユーザーの行動は複数の要因が絡み合った結果です。色はその一部に過ぎません。それにもかかわらず、議論が色に集中してしまうのは、「分かりやすさ」と「説明しやすさ」が優先されているからだと言えるでしょう。
色彩には一定の効果があるが、文脈を無視してはいけない
色が人の心理に影響を与えること自体は、マーケティングの世界でも広く知られています。赤は注意を引きやすく、青は信頼感を与え、緑は安心感や前向きな印象を持たれやすい。こうした色彩心理の知識は、デザイン設計において確かに有効です。
しかし問題は、「その色が、どの文脈で使われているか」を無視してしまうことです。たとえば、金融サービスやBtoB向けの高額商材において、過度に刺激的な赤色のCVボタンを配置するとどうなるでしょうか。目立つどころか、「急かされている」「売り込まれている」という不安や警戒心を与えてしまう可能性があります。色は目立つだけでなく、感情も同時に喚起するため、使い方を誤ると逆効果になり得るのです。
また、サイト全体のトーンとの関係も重要です。落ち着いた配色で信頼感を醸成してきたページの最後に、突然派手な色のボタンが現れると、ユーザーは違和感を覚えます。その違和感は、「この一歩を踏み出して大丈夫だろうか」という無意識のブレーキにつながります。CVボタンは、ページの流れの中で自然に存在していることが重要であり、浮きすぎるデザインは必ずしも正解ではありません。
色の効果は、周囲との相対関係によって決まります。つまり、「赤が良い」「緑が正解」といった絶対的な答えは存在しません。ユーザーがどんな心理状態でそのページを読み、どんな期待を持って次の行動に進もうとしているのか。その文脈を理解した上で初めて、色は意味を持ち、行動を後押しする要素になるのです。
CVボタンは「押させる装置」ではなく「次に進むための合意点」
CVボタンは、ともすると「ユーザーに押させるための装置」として扱われがちです。目立たせる、強調する、迷わせないというようなことは、もちろん重要な要素ですが、それだけで人は行動しません。ユーザーがボタンを押す瞬間に行っているのは、「操作」ではなく「判断」です。
ユーザーはページを読み進めながら、「このサービスは自分に関係があるか」「信頼できそうか」「次に進んでも損はしないか」といった小さな判断を積み重ねています。そして、その判断が一定のラインを超えたときに、初めてCVボタンを押します。つまり、CVとは強制的に生み出すものではなく、納得の結果として自然に生まれるものなのです。
この視点に立つと、CVボタンの役割は大きく変わります。それは「行動を起こさせるスイッチ」ではなく、「ここまで理解した内容に同意し、次に進むための合意点」です。ユーザーにとっては、「申し込む」「問い合わせる」というよりも、「もう少し詳しく知る」「一歩だけ前に進む」といった感覚に近い場合も多いでしょう。
だからこそ、CVボタンの文言や位置、デザインは、ページ全体の流れと一貫している必要があります。それまでの説明やメッセージとズレていると、ユーザーは急に現実に引き戻され、不安を感じます。逆に、内容に納得し、心理的な準備が整った状態で提示されるCVボタンは、特別に強調しなくても自然に押されます。
CV改善とは、単にボタンをあれこれ操作することではありません。ユーザーが「ここまで読んで良かった」「次に進んでみよう」と思える状態を丁寧に設計すること。その結果として、CVボタンは「押される存在」になるのです。
本当に設計すべきは「ボタン」ではなく「その手前」
CV改善というと、どうしてもボタンそのものに意識が向きがちですが、実際に成果を左右するのは「その手前」にある設計です。ユーザーは、いきなりボタンを見て行動を決めるわけではありません。そこに至るまでの情報の積み重ねによって、心理的な準備が整った結果としてボタンを押します。
まず重要なのが、情報の順序です。ユーザーが知りたいこと、抱えている不安、判断材料となる要素が、適切な順番で提示されているでしょうか。課題提起の直後にいきなりCVを置いても、「まだ判断できない」と感じるユーザーは多いはずです。逆に、共感→理解→納得という流れが自然にできていれば、強く訴求しなくても行動は起きます。
次に、コピーと文言の設計です。CVボタン単体の文言よりも、その直前に書かれている説明文や見出しが重要な役割を果たします。「何が得られるのか」「次に何が起こるのか」が明確になっていなければ、ユーザーは不安を感じて立ち止まります。ボタンは、その不安を解消した“あと”に置かれるべきものです。
また、余白や視線誘導といったレイアウト要素も無視できません。情報が詰め込まれすぎていると、ユーザーは読むこと自体に疲れてしまいます。適度な余白や段落構成によって、視線が自然に流れる状態を作ることが、結果としてCV率を押し上げます。
成果の出るサイトは、ボタンが特別に主張していないケースも多く見られます。それは、押す前に迷う理由がすでに取り除かれているからです。CV改善とは、最後の一押しを工夫することではなく、そこに至るまでの「納得のプロセス」を丁寧に設計することに他なりません。
マーケティング担当者・経営層が見るべきCV改善の視点
CV改善を考える際は、「どこを変えたか」ではなく「なぜ変えたのか」を説明できているかが重要です。ボタンの色を変えた、配置を変えた、といった施策自体は手段にすぎません。それがユーザーのどんな心理や行動の変化を狙ったものなのかが説明できなければ、改善は単なる属人的な試行錯誤で終わってしまいます。
マーケティング担当者に求められるのは、部分最適から一段引いた視点です。CV率の上下だけを追うのではなく、「なぜこの導線で、この文脈なら行動が起きるのか」を仮説として言語化し、検証すること。その積み重ねが、再現性のある改善につながります。単発の成功事例を量産するよりも、考え方を社内に残すことが重要です。
また、経営層にとっては、CV改善は単なるデザイン調整ではありません。そこには、顧客にどんな価値をどう伝えたいのかという、事業戦略そのものが表れます。表現を変えた結果、問い合わせの質がどう変わったのか。リードの温度感は上がったのか。こうした視点で成果を見ることで、マーケティングは「数字合わせ」ではなく、意思決定の材料になります。
CVボタンの議論が色やサイズで止まってしまうのは、会社として、改善の視点が短期的になっているサインです。ユーザー理解を深め、行動の理由を設計する。そのプロセスに目を向けることで、CV改善は単なるテクニック論ではなく、売上向上のための戦略的なアプローチへと変わっていきます。
さいごに
「CVボタンは目立たせればいい」という考え方は、決して間違いだというわけではありません。色やサイズといった見た目の要素が行動に影響を与えることは事実です。しかし、それはあくまで設計全体が整っていることが前提です。ボタンだけを切り出して最適化しようとすると、改善は一時的な数字の変化で終わってしまいます。
本当に重要なのは、ユーザーがどんな心理状態でページを読み進め、どのタイミングで「次に進んでもいい」と感じるのかを理解することです。CVボタンは、その判断を後押しする役割にすぎません。CVボタンは、単に押させるための装置ではなく、納得の結果として自然に押されるものであるべきです。
そのためには、色やデザインを議論する前に、「誰に、何を、どんな順序で伝えているのか」を見直す必要があります。ユーザーの不安や疑問が解消され、行動する理由が明確になっていれば、CVボタンは過度に主張しなくても機能します。逆に言えば、ボタンをいくら調整しても成果が出ないときは、その手前の設計に改善余地がある可能性が高いのです。
CVボタンの改善は、小手先のテクニックではありません。ユーザー理解を深め、行動の理由を設計し、その結果を検証する。この地道なプロセスこそが、長期的に成果を生み続けるマーケティングにつながります!

