
こんにちは。ブランディング・マーケティングに関するコンサルティング事業を展開している、株式会社ピージェーエージェント代表取締役の加藤です。
BtoBサイトにおける「お問い合わせ」は、企業の売上に直結する重要な“商談の入り口”です。しかし現実には、せっかく時間と費用をかけてサイトに集客した見込み顧客が、いざフォームにたどり着く前に離脱してしまう――そんなもったいない状況が多くの企業で起こっています。フォームの項目が多すぎる、CTA(Call To Action)の場所が分かりにくい、問い合わせ後のレスポンスが遅い……これらの要因が、日々の商談機会を逃す原因となっているのです。
BtoBマーケティングにおいては、購買サイクルが長く、意思決定者も複数にわたることが多いため、少ない「問い合わせチャンス」をいかに確実に拾い上げ、確度の高い商談につなげるかが重要です。サイトのデザインやコピーをいくら工夫しても、最終的なコンバージョン導線が整っていなければ、成果には結びつきません。
本記事では、CTAボタンの配置、問い合わせフォームのステップ設計、営業チームとの連携といった、BtoBサイトにおける「お問い合わせ導線」の改善ポイントを、具体例とともに解説します。ぜひ自社サイトの改善ヒントとしてご活用ください。
なぜBtoBサイトの「お問い合わせ導線」は改善が必要なのか
BtoBビジネスにおいて、サイト訪問者が「お問い合わせボタンを押す」ということは、顧客の温度感が高まった瞬間です。しかしその一歩手前で離脱してしまうユーザーは意外と多く、見えない機会損失が発生しています。特にBtoBの場合、問い合わせに至るユーザーの数がBtoCに比べて少ないため、ひとつひとつの導線改善がCVR(コンバージョン率)に大きく影響します。
多くの企業が見落としがちなのが、「サイト自体の設計は見やすく整っているのに、問い合わせまでの導線が複雑・不親切である」というケースです。たとえば、CTAボタンが目立たない場所にあったり、複数ページにまたがって入力させる長いフォームが設定されていたりすると、ユーザーは心理的にストレスを感じ、離脱を選びます。
また、マーケティング部門と営業部門の連携が弱い場合、せっかくの問い合わせが迅速に対応されず、顧客の熱量が下がってしまうことも。つまり「お問い合わせ導線の設計」には、UI/UXの工夫だけでなく、社内の体制面も含めた改善が求められます。
リード獲得単価が上昇しがちな今、貴重な訪問者を確実に商談へとつなげるために、導線の最適化は欠かせない取り組みなのです。
CTAボタン配置の基本と最適化のポイント
BtoBサイトで成果を上げるためには、ユーザーの「行動」を意識したCTA(Call To Action)ボタンの配置が不可欠です。CTAは単なるボタンではなく、ユーザーに具体的なアクションを促す重要なナビゲーションです。そのため、「どこに配置するか」「どんな文言にするか」でコンバージョン率は大きく変わります。
まず基本として、CTAはファーストビュー(画面を開いて最初に見える範囲)に必ず配置しましょう。スクロールせずにすぐ目に入る場所にあることで、行動のきっかけを作ることができます。また、ページの中間や末尾にもCTAを繰り返し配置するのが効果的です。読み進めたユーザーが「問い合わせてみようかな」と思ったときに、迷わずアクションできる導線を用意しておくことが重要です。
さらに、固定表示型のCTA(画面をスクロールしても常に表示されるバナーなど)もおすすめです。特にスマートフォンユーザーには、CTAが常に見えることで行動が促されやすくなります。
文言の工夫も成果に直結します。「お問い合わせはこちら」だけでなく、「資料請求する」「無料相談してみる」「導入のご相談はこちら」など、訪問者の心理に合った表現を使うことで、クリック率は向上します。
単に「目立つ色にする」だけでなく、ユーザーの行動と心理に寄り添ったCTA設計が、成果を上げる第一歩です。
どれも言われてみると「当たり前だろう」「そんなことは分かっている」という内容かもしれませんが、意外にできていないことも多いので、まずは上記観点で自社のサイトを改めてチェックしてみましょう。
フォームのステップ分割とUX改善
BtoBサイトにおいて、問い合わせフォームは「ユーザーが最後に通過する関門」です。しかし、その関門が煩雑だったり、心理的負担が大きかったりすると、せっかく意欲を持ってくれた見込み顧客が心が折れて離脱してしまいます。実際に、多くのBtoBサイトでフォームの離脱率が高く、「入力途中でやめてしまう」ユーザーが多数存在します。
この課題に対する有効なアプローチの一つが「フォームのステップ分割」です。いきなり10項目以上の入力を求めるのではなく、まずは会社名とメールアドレスだけを入力してもらい、次のステップで詳細情報を入力してもらう、といった分割設計が有効です。こうすることで、「とりあえず問い合わせを済ませよう」と思っているユーザーの心理的ハードルを下げられます。
また、入力項目は極力シンプルに。どうしても必要な情報以外は非必須に設定し、選択式やプルダウンメニューを使うことで、入力負荷を軽減できます。BtoBだからといって詳細情報をすべて初回で得ようとすると、かえってコンバージョン率が下がってしまうのです。
さらに、スマートフォンでの入力体験にも配慮が必要です。小さな画面でもスムーズに入力できるUI設計(タップしやすいボタン、入力補助機能など)が、ユーザー体験を左右します。 フォームは「ただの入力欄」ではなく、商談へつながる大切な接点です。訪問者の不安や手間を最小限に抑え、気持ちよく送信してもらえるようなUXを追求しましょう。
マーケ×営業の連携でコンバージョン後の速度と質を上げる
BtoBサイトにおける「お問い合わせ導線」の改善は、フォーム送信で終わりではありません。むしろ、フォーム送信後の対応スピードと質こそが、商談化率を左右する決定的な要素です。ここで重要になるのが、マーケティング部門と営業部門の連携です。
以前の記事でも、問い合わせ後のスピーディーな営業対応の重要性についてお話ししましたが、問い合わせが来てから数日以上経っても営業担当者が対応できていない場合、リードの温度感は急速に下がってしまいます。特に同時に複数社へ問い合わせているケースでは、「一番早く連絡をくれた会社」が有利になる傾向があります。スピードは信頼と直結するのです。
このような機会損失を防ぐためには、SFA(営業支援ツール)やCRMと連携し、フォーム送信と同時に営業担当へ即時通知が届く仕組みを整えることが重要です。メール通知だけでなく、Slackやチャットツールとの連携も有効です。また、「この内容なら●●部門の担当者」「この条件なら優先対応」など、リードの内容に応じた自動仕分けルールを設けておくことで、対応のスピードと精度が大きく向上します。
さらに、営業が受け取る情報の質も重要です。マーケティング部門が、問い合わせ経路、閲覧ページ、キャンペーン参加履歴などの行動データをセットで提供することで、営業は相手の関心に合わせた提案が可能になります。
マーケと営業が分断されていては、せっかくのリードも活かしきれません。フォームの最適化と同時に、社内の連携フローまで見直すことが、成果につながるサイト改善の本質です。
改善事例に学ぶポイント
「お問い合わせ導線を見直して、商談数が増加した」――そのような成功事例は、弊社のクライアント企業様でも数多くあります。特別なツールを導入しなくても、ちょっとした導線設計の工夫が大きな成果を生むこともあるのです。ここでは、いくつかの事例を共有したいと思います。
あるIT系企業では、従来「ページ下部」にしか設置していなかったCTAボタンを、ファーストビューと記事中間にも追加したことで、クリック率が大幅に増加。訪問者がアクションしやすい場所を意識しただけで、コンバージョン数が目に見えて改善しました。
また、別の製造業企業では、「10項目以上の長いフォーム」を3ステップに分割したことで、フォーム完了率が改善。最初のステップで最低限の情報だけを入力させ、「次に進む」という体験を小刻みに提供することで、ユーザーの負担感を軽減できました。
さらに、ある営業会社では、営業と連携して問い合わせ直後の自動返信メールに「営業担当者の顔写真とひとことメッセージ」を添えることで、ユーザーからの信頼感が高まり、商談化率が上昇しました。「人が見える」対応は、無機質になりがちなBtoBサイトにおいて差別化につながります。 これらの事例に共通するのは、いずれも「小さな改善・当たり前のことの積み重ね」ということかと思います。派手なリニューアルではなくとも、地味な導線改善こそが、成果につながる王道の手法なのではないでしょうか。
さいごに
BtoBサイトにおける「お問い合わせ導線」は、単なるUIの一部ではなく、見込み顧客との最初の接点であり、売上に直結する極めて重要なビジネスプロセスです。フォーム送信というアクションの裏には、ユーザーの「もっと詳しく話を聞いてみたい」「この会社に興味がある」という強い意志が存在しています。それを逃さず、スムーズにつなぎとめる仕組みを構築できているかどうかが、成果を分ける大きな分岐点となります。
本記事でご紹介したように、CTAボタンの配置やフォーム設計、営業との連携はどれも「今日から改善できる領域」です。特にBtoBビジネスでは、リードの数が限られる分、ひとつのリードの重みが大きく、小さな導線の違いが最終的な成果に大きな差を生みます。
重要なのは、完璧な形を一度で作ろうとするのではなく、小さな改善を継続していくこと。クリック率、完了率、対応速度など、定量的な指標をもとにPDCAを回すことで、導線は着実に最適化されていきます。
サイトに来訪した「未来の顧客」を、確実に商談・受注へとつなげるために、今一度、自社サイトのお問い合わせ導線を見直してみてください。その一歩が、売上の最大化につながるはずです。